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中里友香『黒十字サナトリウム』(徳間書店08)読了。
(承前)
うーむ。5章までは完璧だったが、6章以降突如ぐだぐだになって唖然。
というか、長篇小説として完結してないのではないか。チェルノブイリ云々はただ終らせるだけのエピソードであり、しかも本筋から必然的に結果されるものでもありません。6章、7章は同じ背景の別の短篇とみるべきで(つまり併録の番外編「逆十字入門」と同じ位相)、長篇としては5章までで未完というのが実態でしょう。
著者あとがきを見ると、6章と7章は番外編執筆後に書き上げられたもので、つまりは授賞したオリジナル原稿(新人賞選者が読んだ原稿)にあとから付加されたものであることがわかります。
これはいわば、バローズ火星シリーズが1巻から3巻までが本筋で残りは全て主筋から離れたそれぞれ独立した番外編であるのと同じような形になっているわけです。ところが火星シリーズの主筋は完結しています。本書は、いうなれば火星シリーズの主筋が完結されないまま、番外編が書き継がれたのと同じ状態といえる。バローズ第三巻が完結しない、即ちデジャーソリスが救出されないままにほったらかしにされて、別の話を読まされたとしなんせ、これは読者としては宙ぶらりんの変な気分になろうというものじゃありませんか、皆さん。
本書もまあそんな感じの読後感になりました。結局黒十字サナトリウムとはなんだったのか? 無論そんなものは存在しなかったというのでもかまわないわけですが、前半(3章まで)は「神聖代」ばりの前言撤回手法が良いほうに効いて「黒十字サナトリウム」が底なしの<謎>として機能していてゾクゾクするほど面白く読まされたのです。ところが4章である程度謎が明かされてしまって、深い霧のような濃密な雰囲気が減退してしまう。でもまだまだ面白い。投稿原稿はここまでのあとにチェルノブイリのエピソードで終っているんだと思います。
しかし上に述べたように、チェルノブイリのエピソードは主筋とは内的必然的な関係がなく、まあ終らせるための道具でしかない。本来あるべきストーリーは、必然的にキリストが吸血鬼と化す意味まで踏み込んで何がしかの結論(それが更に謎を深めるものであったとしても)を要求されるものであるはずなんです。その意味では逃げており、ちょっと肩透かしでした。
もっとも6章も7章も、独立した短篇と考えればどちらもよく出来ていると思います。まあ6章は意図的なのか(というのはすべての章で文体が書き分けられている)文体が栗本薫を連想させるのが難ですが(笑)。5章の前半の鏡屋のエピソードはまるで山尾悠子を読んでいるかのようでしたし(この部分だけ取り出せば珠玉の短篇)、基本短篇作家なのかも。逸材であるのは間違いない。願わくは耽美小説に行ってしまわないで幻想SFを書いてほしいと思いました。まずはこの背景世界とはまったく別の世界の話が書けるかが試金石かも。
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