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Re: とげくまvsとべくま

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月17日(木)16時42分10秒
返信・引用 編集済
   海野さん

 いえいえ、あるサイトで、私は「とべくま」で通用しているのです(^^;

 ともあれ今後は、とげくまくんが辛口コメントをつぶやいてくれるのですね。楽しみです(笑)

 丸山健二の辛口ツイッター

『ユーディット ドライツェーン』は210頁。
 ユーディットの正体が明らかに! なんと……!!
 

Re: とげくまvsとべくま

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 5月17日(木)00時23分59秒
返信・引用
  「とげ、クマゴロー!」ですか?(笑)
砥げ?
包丁を砥ぐのでしょうか?

http://marinegumi.exblog.jp/

 

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月17日(木)00時01分31秒
返信・引用 編集済
   日食が始まったら、懐中にはくれぐれも気をつけるべし。
「日食掏摸」が暗躍するからだ。

 事実、昭和11年(1936)6月19日の日食時、東京と大阪でそれは起こった。

(銀座で日食観測する人。後ろは松屋)

 周囲が暗くなるから?
 いな。
 その瞬間、通行人という通行人は、例外なく、おもむろに取り出した日食メガネをかけて、あるいは目にかざして、空を見上げる。
 日食掏摸は、その機を逃さず、通行人の懐を掠めるのだ。

 それゆえ日食掏摸は、いまだ日食を見たことがない。

 (岸和田の小学校)


 ※画像はこちらのブログからお借りしました。無断借用お許し下さい(>おい)m(__)m
 

とげくまvsとべくま

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月16日(水)23時32分59秒
返信・引用 編集済
   なんだ? ライバルか(笑)→とげくま

『ユーディット ドライツェーン』は150頁。
 ノッてきました(^^;

 誤植発見。101p下段。X「不和」→○「不破」
 

眉村さん情報

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月16日(水)17時25分22秒
返信・引用
   『眉村卓コレクション異世界篇 I ぬばたまの・・・』が、アマゾンで予約扱いになりました!→【amazon】
 6月15日発売予定です。

 アマゾンのページには画像がまだですが、もうできあがっているとのこと。

 それとは別に、各作品に眉村さんのイラストが付きます。
 これも私は個人的に楽しみにしておりまして、収録作品は全体として、「この」社会との齟齬、距離感が隠しテーマになっていて、ある意味深刻な話なんですが、タクちゃんキャラクタはむしろ飄々とした感じですよね。
 これがどう折り合いが付けられているか、興味津々なのであります(^^)
 

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月16日(水)00時13分36秒
返信・引用 編集済
       暮色の研究

「やっぱり癌だって」
 文恵が言った。「母から電話あった」
 夕飯が済んだところだった。
 テーブルの上はまだ片付けていない。
 向かい合わせにすわって新聞を見ていた夫は、ちらと目を上げ、視線を
戻した。
「で、半年。末期で」
 それはある程度予想されていたのだ、と、彼は思った。
 彼には身内に末期がん患者があり、亡くなるまでをつぶさにみていた。
 正月に、妻の実家でみた義父の痩せ方、面変わりは、その再現のように
思われた。
 一度、大学病院で、と、提案したのは彼だった。
 ふと彼は、息子に視線を向けた。
 襖を開けはなった次の間で、和也は、座り机に向かって一心に何か描い
ていた。
 小学校に上がって、息子は、絵をかくことを好むようになった。
 描くのは、テレビの怪獣が多かった。
「和也、なに描いてんだい?」
 彼は息子に声をかけた。
「マルヒだよ」
 どこで覚えてきたのか、そんな難しい言葉を吐くと、息子は両手で絵を
隠した。
「マルヒなのか」
 彼は吹き出した。
 どうやら頭の中のイメージと実際が、大きくかけ離れてしまったらしい。
 文恵も笑った。

「それにしても」
 話題が戻る。「もっと早く連れて行くべきだったよな」
「村西先生を」
 と、文恵は、実家の近所の医院の名を上げた。「馬鹿みたいに信じきっ
ているのよね」
「そうだな」
「手術もできないらしいの」
「言ったのか?」
「何を?」
「その……」
「それは言わないほうがいいんだって」
 そういうと、テーブルの上の食器を、台所に運び始める。
「両説、あるけどな」
 その背中に向かって声をかける。「そういえば、よく食ってったっけ」
「え?」
 文恵が聞き返す。
「ほら、あれは盆だったか、おやじさん、すごい食欲だったじゃないか。
おふくろさんが目を覚ましたら、寝間着姿で、炊飯器から飯を食ってたっ
て」
「そういえば……あの頃からなのかしら」
 やせ細った老人が、夜半、台所で一心に咀嚼しているイメージは、鬼気
迫る何かがあった。
「あの頃からなんだろうな」

 会話が途切れる。

「今度の週末に、帰るか」
 彼は言った。「和也も、春休みだろう」
「帰るの?」
「度々帰れるほど、近くないんだから。元気なうちにさ」
 夫と妻は、申し合わせたように、次の間を見る。
 息子は、飽きもせず机に向かって、背中を丸めていた。

     ※

 朝早くに出発した。
 田舎の小駅に降り立ったときには、日暮れ間近だった。
 山間の村に、風が吹き荒れていた。
 田んぼと田んぼの間の細い道をたどる三人に、正面から強風が吹きつける。
 電信柱が、わあん、わあん、と、鳴っている。
「春一番だな」
「ハルイチバン?」
 和也が訊く。
「これが吹くと、春がやってくる」
「ふうん」
「また言葉、おぼえたね」
 文恵が笑う。
 歩いているうちに、本格的に暮れてきた。
 道にそって、ぽつん、ぽつん、と、立つ街燈に、明かりがともった。
 その明かりに照らし出されて、砂埃が、渦を巻いて舞っているのだった。
「――ハルイチバン」
 と、和也が呟く。

     ※

「むこうは、快晴でした」
 彼はしゃべっている。
「ここらも、昼ごろまでは、よう晴れとりました」
 と義父。「夕方からじゃよ、風が出てきたのは」
「だいぶお元気そうで」
「うむ。かなり楽になった。大学病院の薬は、よう効くのう」
「やっぱり胃潰瘍で」
「ああ。食事に制限があるのが、辛いのう」
 と、義父は笑った。
「それは仕方がないですね」
 調子を合わせる。

「しかし、疲れました。十時間、乗り詰めはきつい」
「満員だったしね」
 と、文恵が言った。
「スキーシーズンなんですねえ」
「そうじゃった」
 頷く。「これからが春スキーの本番じゃ」
「○○スキー場ですか」
「このあたりは低いから、もう、雪はないがな」
「そうだ、和也。あしたスキーに行ってみるか」
「うん。行く!」
 と、和也は声をはずませた。

 そういえば、と老人は和也を見た。
「和也は、板はまだか」
「板?」
「スキーの板だよ。まだ持ってません」
 彼が代わりにこたえる。
「そうか。そろそろ一式買うてやらんにゃいかんなあ」
「まだいいよ。早いよ」
 文恵が手を振る。「今買っても、すぐに体が大きくなってしまうじゃな
い」
「大きゅうなったら、また買い換えるさ」
 老人は、納得しない。
「スキー場に行けば、貸しスキーがありますから」
 と、彼。「明日はそれで十分ですよ」
「それじゃ、和也よ」
 と、老人は孫に話しかける。「お前さんが来年来る時にゃ、じいちゃん、
屹度、よい板を選んでおいてやるからな」
「うん。ありがとう!」
 和也はそういって、しかし、ちょっと下を向いて考えこんだ。顔を上げ
ると、祖父を見た。
「じいちゃん?」
「なんじゃ?」
「じいちゃんの病気って、ガン?」

 外を吹く風の音が、急に大きくなったようだった。
 そのように、彼には聞こえた。ハルイチバン……

「うん。そうじゃよ、和也」
 病人は微笑んだ。
「和也は、難しい言葉を知っとるんじゃのう」

●これは、ずっと下って、大学時代の作品。しかし全く気に入らず、筐底に埋もれさせていました。なぜなら、オリジナルはまさに既成のセンチメントに寄りかかった通俗小説で、あざとく読者を誘導する説明的形容詞にあふれていたのです(例えば、「急に思いつめたような早口で話しかけた」とか「とつぜん、せかせかとした調子で、食器を片付け始めた」とか)。それをなぜ今になって? 実は、「サイバラバード・デイズ」を読んで、修整のヒントをもらった気がしたのです。説明的表現を、一切、は無理だったのですが、できるかぎり削除してみました。自分では、かなりましになった(臭みがとれた)気がします。結果19枚が7枚に(笑)。でも通俗小説は通俗小説です。私の柄ではありません。と、今ははっきり自覚できますね。今後こういうのは、書かない(書けない)と思います。でもこういうのを書いてみたいと思った時期もあったんですよねえ(^^;

『ユーディット ドライツェーン』に着手。80頁まで。
 

「サイバラバード・デイズ」読了

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月14日(月)23時59分21秒
返信・引用 編集済
   イアン・マクドナルド『サイバラバード・デイズ』下楠昌哉・中村仁美訳(新ハヤカワSFシリーズ 12)読了。

 いやー面白かった。読むのに時間がかかりましたが、それは数時間で読みとばせる軽い作品では絶対に味わえない重厚さ(混沌性)のためなのです。
 ただ、インドという世界が、私、というよりも日本人にはずいぶん遠い世界であることも一因ではありそう。だいたい地名がまったく脳内の地図上にイメージできません(私が習った頃とは地名が変わっています)。でも、英国人にとっては、インドって、おそらく日本人にとっての満州や上海くらい、馴染み深い世界なんでしょう。なんてって、大英帝国の最大の後背地だったんですから。

 ともかく、サイバー時代のインドが舞台です。サイバー世界とは言い条、イーガンのそれみたく、きれいに整理整頓された抽象的な世界ではありません。泥臭い、ごちゃごちゃした、具体の世界。カースト制度は変形しながらも残存しており、庶民の僧侶への敬愛はわが国の一時代前を髣髴とさせます。いわば昭和30年代の日本がサイバー化された、そんな感じかも。そこから醸成される渾沌感が素晴らしい。

 著者の筆致も、そもそも北アイルランド在住の、苗字からしてアイルランド系のサイエンス・ファンタジー作家でありますから、AIを描いても妖精にしか見えません(ここがイーガンと決定的に異なるところ)。あ、インドですから、ジンか。
 長中篇「ヴィシュヌと猫のサーカス」で、主人公を長命族の超知性のブラーミンとしてこの世に生まれさせた遺伝子工学のドクター・ラオなんて、ラス・サヴァスとどこが違うねん、という感じ。

 結局、妖精が存在した時代を、サイバー世界で再現させるのが、著者の目論見だったんでしょう。張り巡らされた電脳空間で同時複数場所に存在しうるAI、AIと結婚する人間の女、長命族ブラーミン、電脳時代の宦官(両性具有ではなく無性人)のヌート、肉体的に死んだ者が、魂をAIにして住むボダイソフト、それらが入り乱れる渾沌たる世界観の、なんと豊穣で猥雑で魅力的なことでしょうか。最後には、それらの中から三柱の神が生まれ、別の宇宙への通路を開き去ってゆく。

 短編集中のいろんなシーンで、光の柱ジョティルリンガなるものが背景に見えているのですが、なんの説明もない。最後まで読むと分かるのですが、このような「説明」を極力排する記述法が、一面、わかりにくさの原因にもなっているのだが、他方、そういう記述法を採るからこそ、それらがラストに凝集して爆発的なセンスオブワンダーを齎しもする。私はこの記述法こそSFの要諦だと思います。

 そのラストは、ある意味「幼年期の終り」に匹敵するもので、圧倒的なイメージなのですが、やはり(生身の)人間は光の柱から拒まれ、光の柱に移行したものは、地球世界を何とも思わなくなってしまう。そこで「ヴィシュヌと猫のサーカス」の主人公が、ある決意を持って、神々が地球で戯れたりできないように鍵を掛けるべく、最後の旅にでるところで、本書は終わります。面白ーい!

 著者は、というか少なくともこの作品の著者は、ヴォークト派ですね。ストーリーよりは小ネタの積み重ね、分厚く上から上から塗り込める感じ。『火星夜想曲』はほとんど覚えていませんが、こんな感じではなかったような。中間派的なイメージが残っています。やはりニュー・マクドナルドなんでしょう。

 この《サイバラバード・シリーズ》には、この世界観の初見となった長篇「River of Gods」というのがあるようです。これはなんとしても翻訳してほしいと思いました。

 なお、訳者はSFプロパーの人ではないので(下楠氏の本業のアイルランド文学研究はすばらしいですが)、SF作品集の訳者解説のプロソディをあんまり理解していないみたいですね。
 ネットで調べた書誌情報を記しておきましょう。


「小さき女神」The Little Goddess
Asimov's Science Fiction June 2005 (2005-06)
Hugo nominee Best Novella 2006

「ジンの花嫁」The Djinn's Wife
Asimov's Science Fiction July 2006(2006-07)
Hugo Best Novelette and BSFA short fiction winner 2007

「カイル、川へ行く」Kyle Meets the River
Peter Crowther編 Forbidden Planets(2006-11)

「サンジーヴとロボット博士」Sanjeev and Robotwallah
Lou Anders編 Fast Forward 1: Future Fiction from the Cutting Edge(2007-02)

「暗殺者」The Dust Assassin
Jonathan Strahan編 The Starry Rift: Tales of New Tomorrows(2008-04)

「花嫁募集中」An Eligible Boy
Lou Anders編 Fast Forward 2(2008-10)

「ヴィシュヌと猫のサーカス」Vishnu at the Cat Circus
書き下ろし(2009-02-24)

 ――――     ――――

長篇 River of Gods
書き下ろし?(2004-06)
2004 - British Science Fiction Award, Novel (Win)
2005 - Hugo Award, Best Novel (Nomination)
2005 - Locus Poll Award, Best SF Novel (Place: 9)
2005 - Arthur C. Clarke Award, Shortlist (Nomination)

 

眉村さん情報

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月14日(月)21時33分54秒
返信・引用
   昨年末、『SFが読みたい2012年度版』の出版社予定欄にて告知されてから、はや半年、ついに、

 出版芸術社《眉村卓コレクション異世界篇》(全三巻)の第一巻『ぬばたまの・・・』

 が、来月6月15日発売となるそうです!

 収録作品は、長篇「ぬばたまの・・・」と、あと「不満処理します」「信じていたい」「公子」「マリオネット」「名残の雪」。

 眉村さんのあとがきの他に、編者の日下三蔵さんによる解説が付きます。

 収録作品は、当然日下さんの選択でしょうが、なかなか味のあるセレクションですね。SFホラーくくりでしょうか(「公子」は、眉村作品の中ではそんなに目立ちませんが、土着的な霊現象の国際感覚による新解釈がなかなかユニークな、スマッシュショットです)。そこに(これは有名な作品ですが)「名残の雪」が加えられているのも、意表をついて面白いですね。

 出版芸術社的には、数光年先行していた筈の『日本SF全集第3巻』を一気に抜き去っての発売です! すばらしい。日下さんに感謝。それにしても『日本SF全集第3巻』は何を愚図々々しているのか。編集者だれやねん。あ……沈黙……(>おい)(^^;
 

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月13日(日)22時55分47秒
返信・引用 編集済
      自殺に関する弁証法的理性批判

 エフ氏は、平凡なサラリーマンだった。
 最近、体調がいまひとつすぐれないエフ氏は、思い立って有給をとり、
病院で精密検査を受けた。

 結果は、予想外だった。
 医師は、いまはすべて正直に伝えることになっているから、と、断った
上で、エフ氏が何千万人に一人という、非常に稀な病気に罹かっている、
と告げた。
 最近発見された病で、治療方法も見つかっておらず、治癒はのぞめない
とのことであった。

 残念ながら余命は半年だが、この病気の特徴で、末期症状といったもの
はなく、最後まで、ほぼ健常に近い身体活動を続けられる。
 それがこの病気のよい点ですかな。家族に看病疲れ等の迷惑をかけるこ
ともないですし――
 と、医師は気楽そうに言うのだった。

 しかし、エフ氏は当事者だから、そんな気楽にかまえていることはでき
なかった。
 思ってもみなかった突然の悲運に、彼は驚き、悲しんだ。
 なぜおれが……と、いきどおり、悩んだ。
 独身であったから、慰めてくれる家族もいない。
 何日も布団をかぶったまま、部屋に引きこもった。

 病魔にやせ細り、苦しんで死ぬのなら、ある意味、諦めもつこうという
ものだ。
 だが、死ぬ瞬間まで、健康者と変わらないというのであれば、それはそ
れで、別の地獄なのではあるまいか。

 いやだいやだ。死ぬまで健康だなんて、耐えられない!

 エフ氏は自殺を決意した。
 健康な余命が、逆に生きる意志を喪失せしめたのだ。

 発作的に布団を蹴って立ち上がると、エフ氏は裸足のまま部屋を飛び出
し、階段を駆け下り、彼の住むアパートの、道をへだてた向こう側を流れ
る、汚くにごった川に飛び込んだ。

 けれども、偶然にもそこに、オリンピックの水泳選手が通りかかった。
 選手は、惚れ惚れするきれいなフォームで水に飛び込み(水しぶきはほ
とんど上がらなかった)、エフ氏をば易々と救出したのであった。

 エフ氏は、疾走するトラックの前に飛び出し、轢死しようと試みた。
 ところがエフ氏、なかなかふんぎりがつかない。
 飛び出そうとしては足がすくみ、身を投げ出そうとしてはたたらを踏む。
 大型トラックがびゅんびゅん通り過ぎてゆく産業道路の路肩を行ったり
来たりするばかり。

 そんなことでどうするニッポン男児、心頭滅却すれば轢死も又痒し、と、
覚悟を決めた。
 エフ氏は歯を食いしばり、目を固くつむって、だだっと走り出した――
は、よかったが、目をつむっていたため、道路の脇のマンホールの蓋が、
ちょうどそのとき、埋設された通信ケーブルの点検のため外されていたの
に気づかなかった。

 今度は、高層ビルの屋上から(もちろん何度もためらったあげくに)、
飛び降りた。
 と、なぜかエフ氏は、石原藤夫の「助かった三人」の、数学者の場面を
(似た状況だったからだろう)、思い出さなくてよいのに、思い出してし
まったのだ。
 けっきょくエフ氏は、次の瞬間、アパートの万年床に、自分を発見する
ことになる。

 これには、さすがの温厚なエフ氏も激怒した。
 彼は考えた。
 日本にいては、到底死ぬことはのぞめない。いっそのこと、南極で凍死
してやろう!

 なぜ南極なのか。なぜ凍死なのか。もはやそんな瑣末な問題にかかずっ
て時間を浪費するエフ氏ではなかった。
 エフ氏は変わった。行き交うトラックを前にして、ブルブル震えていた
エフ氏は、もう、いなかった。

 とはいえ、しがないサラリーマンのエフ氏に、簡単に南極へ出掛けられ
るだけのたくわえがあろうはずがない。
 それからエフ氏は、死に物狂いで働いた。会社が引けてから、バーテン
のアルバイトもしたのである。
 彼はそのときまで、こんなにがむしゃらに働いたことはなかった。

 時間を忘れ、寝食を忘れた。

 それを続けられたのは、南極で死ぬという生きがいを見出したからに
ほかならない。
 彼は働くことに、喜びすら感じていた。

 そうして、夜と昼と、昼と夜が、なんの珍事もなく、交代交代にやって
きては去っていった、その突き当たり――エフ氏の手には、南極行きの航
空機のチケットが握られていた。もちろん片道切符。
 次に、エフ氏は機上の人であった。最新鋭の超音速機。

「やれやれ。これでようやく、死ぬことが出来るな」
 エフ氏は満足そうにつぶやく。
 深々と、シートをたおして、彼はぐっすりと眠った。
 久しぶりの熟睡。
 そのまま、目覚めなかった。

 医師の宣告より、ちょうど半年後のことだった。


●本篇は「識別者」に次ぐ高得点作品で、評価は準々Aでした(^^)。チャチャヤン日記によれば、1971年2月26日に「送ることに決めた。あとは切手を貼るだけ」とあり、3月4日の放送で「ヤッタ! 準準A」と書いていますね。なおオリジナルは「癌」なのですが、眉村さんの講評でも「癌」はこんな風にはいかない、と言われたと思います。極めて稀な致死病に書き直しました。

 さて、40年前の習作の修整をやってきましたが、もう残りは(あと数点あります)、修整してもどうしようもない感じのばかり。アイデアを生かすためにはストーリーを一から作り直さなければダメですね(これまでストーリーは触らなかった)。ということで、まずはこれにておしまいにいたします。お読み下さってありがとうございましたm(__)m

 

「ユーディット ドライツェーン」到着

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月13日(日)12時00分16秒
返信・引用 編集済
   平谷美樹さんの新作長編『ユーディット ドライツェーン』(東京創元社)が届いていました。
 早い!
 注文したのは11日(金)の夜中。ですから36時間かかっていませんね。私の裏ワザの勝利なのか、アマゾンのシステムが改善されたのか。

 早く着くのはありがたいことが、肝腎のこっち側の体制がまだできあがっておりません。
 『サイバラバード・デイズ』今日中に読んでしまおう。残り40頁。

 ところで、「ユーディットXIII」ですが、この「XIII」がワープロですぐ出てこない(「13」では変換候補に上がってこない)のです(しかも機種依存文字)。
 いやまあ単語登録しちゃえばいいんですけど、インターネットでの検索の際、敷居が高くなってしまいますね。あ、これは誤用だった。抵抗値が上がっちゃうんじゃないでしょうか。
もちろん「ユーディット」でも、「ユーディット13」でも似た結果は得られますが、何パーセントかのいらちな人間は「XIII」がすぐに出てこない段階で、検索を諦めてしまうかも知れません。少なくとも私には相当抵抗感が高かったのですが、現物を見たら、背表紙はそのままですが、表紙のタイトルは「ドライツェーン」になっており、その辺憂慮したというか配慮したんじゃないかな。

 帯を見て(まだ中身はあけてないのだが)、しまったと臍を噛んだのは、「独裁者」の文字でありまして、私も、主人公が元画家なら当然あの人物も相当関わってくるはずだな、と思いついてはいたのでした。
 過去作品の修整が楽しくて、掲示板にそれについて記載しておかなかったのは一生の不覚(^^;
「わしが思ってたとおりや」では、そこら辺の年寄りの言説になってしまい、「そうでっか」といなされるだけですもんね。

 まあこの文も、年寄りの言説そのものか(ーー;
 

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月12日(土)12時23分27秒
返信・引用 編集済
       太陽系デッドヒート

 無数にあるらしい平行宇宙の中には、光速に近づくと時空が歪んじゃう
ような、そんな奇態な宇宙も、存在している可能性があるんだって。
 先日読んだ科学雑誌の記事に書いてあった。
 そんなややこしい宇宙に住んでなくてほんとによかった。
 これから話すことを、その宇宙の住人に聞かせてやったら、目を回すだ
ろうな。

     ※

 オレは、外縁速度無制限軌道(通称アウトバーン)を、最近買ったばか
りの3602年型ハイパー・スポーツ・フライング・シップ《HSFS3317》
でぶっ飛ばしていた。
 もちろんご存知とは思うが、HSFSの3000番台は、現在、太陽系で生
産されているこのタイプの中ではダントツの高速性を誇っている。
 ライバル社と比べるとかなり割高だったが、オレに買えないほどのもの
でもなかった。何たって背中を流れる銀のラインがめっぽう美しいのだ。

 外縁速度無制限軌道というのは、オレたちのような、金持ち階級の道楽
息子でスピード狂という者のために、最近、冥王星軌道の外側に設定され
た有料高速軌道のこと。
 ちなみにアウトバーンはもちろん「out-bahn」だよ。「auto-bahn」じ
ゃないよ。

 オレたちのために(「息子たちのために」と言い換えてもよい)とは聞
こえがいいが、要するに、四六時中混雑し渋滞している系内を、無謀運転
でかき回されるくらいなら、外縁帯に専用軌道を作って、そこに隔離して
しまえ、というわけだ。

 それにしても、最近の系内交通事情は最悪だね。
 金星バブリーヒルズのわが邸からアウトバーンまでは、いわゆる「地道」
を(もちろん交通法規順守で)通っていくんだが、ほんと、イライラのし
通しだったよ。
 だから、やっとこ系内を抜けてアウトバーンに入り、フルスロットルで
すっ飛ばしたときは、溜りに溜っていたモヤモヤが一気に晴れて、いや
もう、スカッとしたもんだぜ。

 で、そうだなあ、軌道を何周かしただろうか、とつぜん、後ろから追い
ついてくる影が、レーダーに映ったんだ。
 びっくりしたぜ。
「オレの艇より早い!?」
 そのとき、オレは、最高速度で慣性飛行中だった。
 等加速度ではあったけれども、この艇に追いつけるHSFSが、太陽系
に何台もあるはずない。どいつだ?

 などと訝っているうちにも、影はするすると近づいて、あれよあれよと
いう間に、レーダーの中心点、つまりわが艇に、重なった。

     ※

 ズシーン。
 衝撃が、艇尾から伝わってきた。
 オレは、慌ててバックモニターのスイッチを入れた。

 ギャッ。
 と叫んで、思わず運転席から跳び上がったオレは、狭いコクピットの天
井に、ゴン、と頭をぶつけてしまった。

 なんと、わがHSFSは、小惑星のちっこいのというか隕石の親玉とい
うか、ゴツゴツした岩肌の上に、ちょこなんと鎮座していたのだ。

 おでこのタンコブにツバをつけてさすりながら、オレは呆然と、しばら
くモニターの画面を眺めていた。
 ふと気づいて、キイを回してエンジンを切った。オカマを掘られた際の
衝撃で、艇は、すでにエンストしていたんだ。

 どうやら艇は、宇宙の放浪隕石の上に軟着陸してしまったらしい。

 あとで冷静になってから分かったのだが、最高速度で等速航行している
オレの艇より、この岩っころの方が少しだけ速かったのだ。
 それで艇は、「フルスピードで前方へ突っ走りながらゆっくりと隕石に
向かって後退し、軟着陸しちゃった」、というわけ。

 オレは途方に暮れた。
 とにかく、艇外に出てみよう。衝突部分を調べてみようと思いついたの
は、さらに十数分後だった。

 宇宙服を着て外に出た。
 そしてオレは、またまたビックラ仰天してひっくり返った。
(本当は、思わず跳び上がりかけたのだが、こんな低重力下で飛び上がっ
た日には、この岩っころの衛星になってしまって、一生どころか永久に
(なぜなら腐敗しないから)周回しなければならなくなることに気づいて、
一瞬の機転で思いとどまったのである!)

 何に仰天したのか。
 太陽が目に入ったのだ。

 アウトバーンは冥王星よりもさらに外側の軌道だ。
 そこからのぞむ太陽は、もはや他の星々と見える大きさでは区別できな
かったけれど、ひときわ強い光輝を放っていたから、毎日のようにこのコ
ースを走らせているオレは、ひと目で見つけられた。
 わが金星から見える地球なみの光度だった。

 ところが、今、その太陽は、金星から見る土星なみの輝きをしか、放っ
てなかったのだ。

 どういうことか。
 言うまでもない。

 隕石が、太陽からどんどん遠ざかっているのだ。

 オレは焦った。
 一刻も早くここから脱出しなければ、宇宙の孤児になってしまう。

 でもどうすれば……
 オレは、はたと膝を打った。
 なーんだ。そうか。
 エンジンをかけて離昇すればいいだけじゃん。
 オレは頭をコツンと叩いた。タンコブに響いて痛かった。
 どうしてこんな単純なことに気づかなかったんだろう。
 動転してたんだな。

 幸い接触部分は、少しヘコんだくらいで、問題なさそうだった。
 オレは慎重に離陸させた。
 するとどういう訳の訳柄か、艇はやはり離陸したのだ。

 だって不思議じゃないか。
 艇は隕石より遅かったから捕まっちまったんだ。
 ところがその捕まった隕石から、ごく普通に離陸できたんだよ。
 何故なんだ?

 これも、あとで考えて納得した。
 例え話でいうならば、「動いている電車のなかで座って読書している乗
客」と同じなんだね。
 その乗客が立ち上がり、電車の中を進行方向に歩き始めたとする。
 それを電車の外で、たとえば踏切で立ち止まって待っている人が見れば、
乗客は、「電車の速度よりも速い速度で歩いているように見える」はずで
はないか?

 整理しよう。
 艇が着陸する寸前の話だが、艇は「フルスピードで前進しながらゆっく
り後退し」、軟着陸したんだった。
 それは、後ろから追いついてきた隕石の速度が、「艇の速度よりほんの
わずか速かった」からなんだ。

 結果として、艇は、隕石に軟着陸して、つまり「静止」したわけだ(速
度メーターはゼロになっている)。
 ところがこの静止状態だが、いうまでもなく、当初のフルスピード時よ
りも、さらに速い速度で(隕石と同速で)、実際は飛んでいるんだよね。

 したがって、隕石上から発進した艇の速度は、[隕石の速度+艇の速度]
となる(ただし速度計は艇の速度のみを示す)。
 なんか変だよねえ。腑に落ちないというか。
 最初は「最高速度」でも隕石に勝てなかったのに、今や「微速度」でも、
その隕石をどんどん後ろに引き離しているんだから。

 しかし、なにはともあれ助かった。ヨカッタヨカッタ。

     ※

 隕石から離脱したオレは、とにかく太陽系へ戻ろうとハンドルを切った。
 ∪ターンし、フルスピードで帰還だ。
 遠くなりすぎて、今やほとんど他の恒星と区別がつかなくなっていた太
陽が、みるみる輝きを取り戻してきた。

 もう少しで冥王星軌道だ。
 そろそろブレーキを踏まなくては。
 こんな高速で渋滞に突っ込んだら、大変なことになっちゃう。

 そのとき、オレはとんでもないことに気づいた。
 ブレーキを踏み続けているんだが、実際速度計では速度は落ちているの
だが、見た目、あんまり速度が落ちているようには見えないのだ。

 そしてついに、速度計がゼロになった。つまりは停止だ。
 ところが艇は、どうみたって、停止していない。
 どういうことだ?

 解説しよう。
 さっき「隕石上から発進した艇の速度は、隕石の速度+艇の速度となる」
といったよね。
 これを逆にいえば、艇の速度がゼロになると、或いはなっても、隕石の
速度は残るということに他ならない。

 要するに、艇はたしかに停止したのだが、この停止とは、結局、隕石上
で停止していた状態に戻るということに過ぎなかったんだ。
 つまり、艇は今、隕石と同速度で太陽系中心に向かって飛び続けている
んだった。噫。

 そんなわけで、艇は停止したまま、冥王星軌道を越えて内側に入った。
 一気に交通量が増えてきた。

 オレの顔面は蒼白になっていたに違いない。
 なぜって、艇は、「通常の最高速度よりも速い速度で停止したまま、渋
滞の中に猛然と飛び込んでいった」のだから。

 運転は得意なんじゃなかったのかって?
 馬鹿にするない!
 オレほどのステアリング、ハンドルさばきのドライバーが、ステアリン
ガーが、太陽系にどれだけいるかっての。

 でも、そのハンドルが役に立たなくなってしまったら、どれほど優秀な
ステアリンガーも、如何ともできない道理じゃないか。

 そう、ハンドルが効かなくなったんだよ。
 オレはビュンビュンせまってくる(実際はこっちがビュンビュン飛ばし
てるんだけど)対抗船を避けようと、必死でハンドルを切っているんだが、
ハンドルは、ウンともスンとも、全然反応してくれないないんだ。これぞ
ステアリンガーの沈黙、なんちゃって。

 …………

 えー。

 でも、よくよく考えればそれも当然の話だったんだ。だって、速度計は
ゼロなんだもの。
 停車中の車に乗ってハンドルを切る場面を想像してみてよ。いくら切っ
たって、車の方向は変わらないだろう?

     ※

 兎にも角にも、よくもまあ、接触事故を起こさなかったものだが、そん
な次第で、艇は太陽系に、一直線に突っ込んでいったんだ。
 土星、木星、火星、地球、そしてわが金星の軌道を横切り、艇はひたす
ら落下していく。太陽に向かって。

 オレはひやひやしていた。
 このまま行ったら、太陽に衝突するんじゃないのか?

 案の定、太陽がぐんぐん大きく迫ってきた。
 ワッと叫んで、思わず眼をつむってしまった。

 しかし幸いにも、コースがちょっとだけずれていたんだ。
 でもそれはラッキーだったのか、アンラッキーだったのか。

 たしかに衝突は免れた。
 けれども太陽近傍をすり抜けようとした艇は、太陽の引力に捕縛され、
スイングバイされちゃったんだ。

 太陽からたっぷり運動エネルギーを供給された艇は、加速させられ、再
び、系外へ向けてブン投げ飛ばされた。
 オレが目を開けたとき、艇は木星軌道に達していた。
 瞬く間に土星軌道を越えた。
 あっという間に冥王星軌道の外へ飛び出した。

 とてつもない速度だった。
 太陽から冥王星軌道まで、約40天文単位だ。光の速度で5時間半。
 それを、わずか十数分で通過したんだから。

 え?
 おい。てことは?

 オレは慌ててバックモニターを見た。
 真っ黒だった。

 エライことになった。
 艇は、加速されて、光速を突破してしまっていたんだ!

 そして停止しているのだ!?

 無数にある平行宇宙の中には、光速を超えることが不可能な宇宙もある
らしいが、この宇宙はそうじゃない。
 秒速30万キロを超えれば光を追い越してしまう。当然の話だ。

 だがそんな考察を加えている暇はなかった。
 何とか手を打たなければ、宇宙の孤児どころか、この宇宙の果てに行き
着き、壁を破って宇宙の外に出てしまうかもしれないのだ。
 なんとかしなければ。
 なにか方法はないのか?

 しかし。
 そういえば。
 さっきからなにか忘れているような……

 「あ、そうか!」

 思わずオレは立ち上がり、天井にゴン、と頭をぶつけた。

 ああ、オレはなんてバカなんだ。
 タンコブにツバをつけてさすりながら、つぶやく。
 「バック」させればいいんじゃないか!

 オレは大急ぎで、ギアを「R」へ叩きこむと、アクセルペダルをかるく
踏み込んだ。
 はたして艇は、速やかに「後進」を開始した。

 やれありがたや!
 オレはさらに踏み込み、どんどん後進速度を上げていく。

 と、真っ黒だったバックモニターに星々が輝きだした。
「前進速度が、光速以下まで下がった」のだ。

 とはいえ、前進していることに変わりはない。
「バックすることで前進する速度が落ちた」だけだ。
 いまやアクセルは目一杯踏み込んでいる。最高速度で後退しているのだ
が、太陽系は遠ざかっていくばかり。
 オレはガックリした。

 と、そのとき、けたたましい警報音が鳴り響き、レーダーが後方に、影
をとらえた。
 オレはバックモニターの倍率を上げた。

 おお、パトシップだ! パトシップが、わが艇を追尾しているのだ。太
陽系をかなり離れてしまったというのに、そのパトシップは、猛然と追い
かけてきたのだ。
 なんというしつこさだ! こんな宇宙の果てまで追いかけてきたのか。
 これほど執念深いヘビのような警官は一人しかいない。オレは嫌な(し
かし嬉しい)予感がした。

 通信用テレビに、ものすごい形相の警官の顔が映し出された。

 や、やっぱり……

 聞き慣れた塩辛声が、艇内に炸裂した。
「オイコラッ。そのHSFSの運転手、お前はLだな。毎度毎度世話を焼
かせやがって。貴様をスピード違反で逮捕する。すぐに停船しなさい。停
船しろ。トマレ! 停まらないと発砲するぞ!」

 そいつはわが天敵、辺境署交通課のガニマタ警部だった。
 でも、その憎々しい糞ったれなシャクレ顔が、なぜか今は、むしょうに
懐かしかった。

「停まったら、またすごいスピードが出ちゃうよー!」
 オレは叫び返した。

「なに寝言いっとる。トマレー。停まらんと本当に撃つぞー!」

 ものすごいスピードで前進するパトシップと、同じくものすごいスピー
ドで後進する艇は、ほぼ等速度で前後に並んで、無限の宇宙空間に、ぽつ
んと小さく、浮かんでいるのだった。

●本作はチャチャヤンが終了後に書いた作品。SFサークル誌に載せようと思ったのだが、あまりのワルノリに書いた本人がヘキエキしてボツにしたもの。今回、冷や汗モノの部分はばっさりカットして、文章全面的に直しました(それでもまだ浮ついているかも)。ストーリーはそのまま。最後まで読めますでしょうか(汗)。
 

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月10日(木)21時08分23秒
返信・引用 編集済
        無抵抗の勝利

 宇宙船ガンジー(略称G号)は、すでに惑星周回軌道に乗り、着陸船の
準備に入っていた。
 G号の電子頭脳は、つつがなくこのミッションをサポートしていた。
 人間のすることは何もなかった。
 ただ、待つのみ。
 だがそれも、もう少しの辛抱。あと数時間で、退屈な待機から解放され
るのだ。
 そう考えると、自然と口元がほころんでくる。

 ――さあ、これからが、いよいよ俺の出番だ!

 と、唯一の人間乗組員であるM隊員は、表情を引き締めるのであった。

 惑星アンティトリボス(略称AT)は、太陽系から80光年の距離にある
G型恒星・猪飼座71番星の第5惑星だ。
 トリボスとはギリシャ語で摩擦。だから反摩擦星。その名の通り、摩擦
力が働かない、きわめて特異な、現在発見されている唯一の世界であった。
 その惑星に、地球人類として初めて、Mは降り立つのである。

 連邦開発省の宇宙調査船G号には、今回のミッションに先立って、惑星
ATの特殊環境にカスタマイズした装備が施されていた。

 まず着陸船。
 摩擦力が働かないので、通常の着陸方法は使えない。
 摩擦がないため、表土に働く力は、惑星自身の引力のみとなる。
 一般的に惑星地表が、山あり谷ありという具合に凸凹しているのは、摩
擦力が大きく与っているからなのだが、ATではその摩擦力が働かず、引
力しか影響しないので、地表面は、海面のように真っ平に均質化してしま
っていた。
 着陸に際し、少しでも鉛直線からずれて斜めに着陸しようものなら、ツ
ルッと、その平らな表面を、永遠に滑り続けることになってしまう。
 同様に、突き刺さって着陸するという方法も検討されたが、摩擦力がな
いと突き刺さることも不可能であるとなり、却下。

 結局、着陸船には、レーザー砲が取り付けられた。
 レーザービームによって、表土をお椀型に蒸発させ、一瞬出来たそのお
椀の底に着地するのだ。
 お椀の底なので、周囲の側壁に遮られて、永遠に地表を滑り続けるとい
う問題は解消される(サーキットのようにグルグルと円運動する)。
 そのお椀状態も、摩擦がないから、すぐに周囲から表土が崩れて押し寄
せてきて、空隙を埋め、着陸船をも埋めるだろう。それでなんとか静止す
るだろうとということになった。

 着陸船問題はこれで片付いたが、船外活動に必要な宇宙服の問題もあっ
た。
 普通の宇宙服は、気密化するため装着した結合部分を幾重にも防護して
いるが、それは結局摩擦力に頼った構造になっている。したがってATで
は使えない(というか通常の着衣はすべてスルッと脱げ落ちる)。それで
装着後、溶着してしまうことで解決した。

 その他もろもろの、摩擦がないことによって生じる問題点が洗い出され、
そのすべてに対応策が講じられた。なにぶん初めてのことなので、それら
は何度も慎重に検討され、遺漏はないはずだった。

 出発の前日、M隊員は作戦本部に呼び出された。
「おい、着陸ピクニックに、おむすび弁当はダメだぞ」
「はあ?」
「ATに着地した途端、むすびがほどけて、さらさらのごはん粒になって
竹の皮からこぼれ落ちてしまうのだ」
「ははあ」

     ※

 着陸船は、G号から切り離され、灰色一色の、単調で、海面のようにな
めらかなATの地表面に向かって、降下していった(ATには海面域はな
く、すべて地表)。
 一切を電子頭脳が制御するので、ここでもやはり、人間は何もすること
はない。
 Mは窓から外を眺めているだけでよかった。
 ピカッと光条が走り、レーザービームが発射されたのが見えた。

 軽い、着地の衝撃。

 着陸船は、レーザーによってできたお椀状の窪みの中で、くるくる回転
を続けていたが、すぐに周囲から土砂が押し寄せてきて、着陸船をその頂
上部分だけ残して埋めてしまった。

 着陸船も含めて、周囲の表土が引力によって静止したと判断した電子頭
脳は、着陸船の、唯一地上に突き出した頂上のエアロックの扉を開けた。
 そこからMが出てきて、惑星ATに記念すべき第一歩を踏み出すのだ。

 だが、いつまでたっても、Mは現れなかった。

 現れないはずだ。
 そのときすでに、M隊員はコクピット内でこときれていたのだから。

 もし彼の遺体を地球に持ち帰ることが出来たとしたら、死因解剖した
医療班は、彼の内臓が、あるべき位置から滅茶苦茶に移動してしまってい
ることに気づいただろう。
 それが死因だった。
 人間の臓器が、夫々のあるべき位置に固定されているのは、実は摩擦力
のおかげだったのだ。

 この惑星を統べる神アンティトリポスの威光は、着地した瞬間、外来者
であるMの体にも及んだのであった。


●まだ何本か残っているのですが、出来が悪いものが残ってくるわけです(^^;。本篇は1970年7月24日脱稿。ここに記したように、初めて「らしき」ものを書いたのが7月11日でしたから、最初期の作品になります。上記の原稿を発見したときに、同時にこの作品の原稿も見つけたのでしたが、これで私自身が第一作とずっと思い込んでいた「黙示録」は、7月24日~7月31日に書かれたものと範囲が定まりました。だからどうだということもありませんが(^^;
憶えていますが、これ、中学理科の時間に、教師が余談で話した、摩擦力がなくなれば臓器が滑り落ちるというのがセンスオブワンダーで、まんまショートショートにしたものです。とはいえ摩擦がなくなるというのがどういうことなのか、理解して書いたわけではありません(今もわかってない(^^;)。だいたい摩擦力と引力しか想定してないのは乱暴すぎますね。他の描写もかなり思いつきで、おむすびの場面などは今回思いついて付け加えた部分ですが、実際こうなるのかどうか、責任は持ちませんので念のため(汗)。



 

小松左京に出会う会

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 9日(水)21時53分14秒
返信・引用 編集済
   昨日仮眠したせいで、また夜更かしになってしまい、だるい一日でした。そもそもGWで起床就寝のパターンが後ろへずれてしまっているわけで、これが元に戻るまでは(そのうち少しずつ自然に戻るわけですが)、しばらくは読書もはかどらないかもですね。今日も今頃から目が冴えてきました!(>おい)

 さて、先日から話題になっております、7月16日サンケイブリーゼにて開催の小松左京企画「小松左京に出会う会」のチラシを入手しました。

 このチラシは、こちらでも見られるのですが、PDFファイルなんですよね。閲覧ソフトをインストールしていないと見ることができません。無料なのでダウンロードしさえすればいいだけの話ですが、私はPCの容量が40%なので、不要不急のソフトは入れないようにしていて、必要なときにインストールして使い終わったらその都度削除するようにしており、アドビーリーダーもふだんは入っていません。そんなのは特殊個人的な気もしますが、そういう人も少数ながらいらっしゃるかも知れません。ということでアップしておきましょう。


 
 

「サイバラバード・デイズ」読み中

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 9日(水)00時19分49秒
返信・引用
   夕方、喫茶店で一時間ほど休憩するのが常で、それが私の読書タイムでもあるのですが、いやー今日は、昨日の夜更かしで居眠りタイムになってしまいました。

 居眠りったって、テーブルに伏せたり、背もたれにもたれて大口あけて高いびきといった、豪快なことはできません。
 最近の人は、近景、中景、遠景で、中景が透明化しているそうで、電車のなかで化粧をしたり食事をしたりするのは全然気にならない、とよく聞くのですが、私は古い人間なので、非常に気になります。
 あ、とはいい条、サラリーマン時代、最終くらいの電車で帰るときは、缶ビールを飲み長座席に寝ころがって帰ったものでした。でも、自分以外はほぼ無人だったはずで(和歌山から大阪に向かって帰る逆コースなのでした)、もし同一車両に他の乗客がいれば、そういうことはせず、連結器あたりの座席で小さくなってこそこそ飲んでいたように思います。

 そういう次第で、今日も本を持ったまま、寝ているような寝ていないような、字面は追っているが網膜に映っているだけ、といった中途半端なそれで、よく本を取り落とさなかったものです。

 『サイバラバード・デイズ』が、連休前の時点で、最後の中篇に数十ページ入っていたんですが、今日久しぶりに続きを読もうとしたら、まったく思い出せない。で、仕方なく最初から読み返していて、それがモチベーションを低下させて頭に入らず、居眠りに向かわせたとはいえそうです。

 ところが、帰宅後も30分ほど寝て、頭がすっきりしたところでまた最初から読みだしたら、これが実にくっきりした映像で、頭に入ってくるのです。
 この作家は再読すべきタイプの作家であると再認識しました。
 まだ残り100頁あるので、二,三日かかりそう。

 読み終わったら、振り出しに戻って、再読すべきなんですが、平谷美樹さんの新作『ユーディット・ドライツェーン』が、版元の東京創元社のサイトによると、五月十五日発売なんですよねえ。非常に微妙。というか数日で再読了などできるはずがありません。
 なので、『サイバラバード・デイズ』再読は、また別の機会にします。そういえば『第六ポンプ』も再読しなければ。新銀背(の短篇集は)、なかなか期待できそうですね(笑)
 
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 8日(火)02時00分25秒
返信・引用
  > No.3664[元記事へ]

あ、カルメンマキは寺山つながりです。
そういわれれば、カルメンマキと緑魔子は(顔は)似てるかもですね。
おやすみなさい。
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 5月 8日(火)01時53分19秒
返信・引用 編集済
  > No.3663[元記事へ]

浅川マキとカルメンマキは別人と言うのは知ってますよねー?
緑魔子と似ているのはカルメンマキだと思いますね。

浅川マキ「ちっちゃな時から」


カルメンマキ「戦争は知らない」


カルメンマキは「マキの子守唄」が好きなんですが、なかったですね。
思わぬ懐メロ大会。楽しみました。
お休みなさい。

http://marinegumi.exblog.jp/

 

Re: みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 8日(火)01時38分47秒
返信・引用
  > No.3662[元記事へ]

 浅川マキって最近亡くなったんでしたっけ。
 先日の大宴会で、中さんがなんたらかんたら言ってましたな。
 私はさほど思い入れはないんですよね。
 そして浅川マキというと、自動的に緑魔子が連想されるのですが、理由は不明。

 
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 5月 8日(火)01時15分30秒
返信・引用
  あ、「スラリコリリ」を編集で変えてしまいました。つながり重視と言う事で(笑)
僕は今でも「スラリコリリ」歌えますよ。
この間、浅川マキさん「ケンタウロスの子守唄」を聞いて「スラリコリリ」を思い出して、歌ってみたらちゃんと歌えるんですよね。
「ケンタウロスの子守唄」はご存じとは思いますが、筒井康隆作詞/山下洋輔作曲ですよねー

http://marinegumi.exblog.jp/

 

Re: みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 8日(火)01時03分36秒
返信・引用
  > No.3659[元記事へ]

>スラリコリり、ヒルピリリは二軒おうちを持っていーるー
 やはり名曲ですよねえ(^^)

>あまりSFを読まない人には
 そうなんですよね。世の中には「あまりSFを読まない」って人がいるんですよねえ(>おい)(^^;

 リクエストは、バングラデシュコンサートより、ビリープレストン「THAT'S THE WAY GOD PLANNED IT」をお願いします!

 
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 8日(火)00時38分49秒
返信・引用 編集済
  > No.3658[元記事へ]

 深田さん

 ありがとうございます。よろしくお願いします。
 20枚を超えてもオッケーですよ。
 パイロット版は、お盆明けくらいを締め切りにしましょうか。

 いま、「チャチャ・ヤング=ショート・ショート」の誌面を踏襲したらどうなるか、試していたんですが、かなり字がちっちゃくなりますね(たとえば、同じくA5の「自殺卵」と比べても)。
 行間を狭くしてフォントを大きくするか、やはり踏襲を優先するか、どんなもんですかねえ。
 ↓クリックで拡大↓
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 5月 8日(火)00時32分1秒
返信・引用 編集済
  > No.3657[元記事へ]

はい、そういうわけで、カウシルズの「雨に消えた初恋」を聞いていただきました。

ところで、先週の「ショートショートコーナー」で紹介した大熊宏俊さんの「方向の終着点」と言う作品に関して、ご本人から次のようなお手紙をいただきました。
http://6823.teacup.com/kumagoro/bbs/3657
はいはい、なるほど大熊宏俊さんの意図はよくわかります。
でもやっぱり、あまりSFを読まない人にはその辺が伝わりにくいと言うのは考えなくてはいけないと思いますね。
ところで、皆さんからもお手紙をたくさんいただいていましたので、先ほど番組の冒頭でネタばらしをしてしまいましたが、実は先週の放送はちょっと私、体調を崩しまして、お休みしたんですね。
それで嵯峨ディレクターが悪乗りしまして、声が私に似ている和田宜久さんを代役に立てようと考えたわけです。
私も家で聞いていましたが、なかなか良く頑張ってらっしゃいましたね。
時々本当に自分がしゃべっているんじゃないかと錯覚を起こしたほどです。
でもやはりリスナーの方の耳はごまかせなかったようで、なんか変だと思った方からのお便りがドーッと押し寄せるという事になっちゃいました。
まあ、そうでなくても最初からこのネタばらしは今日する予定になっていたんです。
いやいやお疲れ様でした。
次の曲は、その和田宜久さんからのリクエストで、ビリープレストンの「ア・シンプルソング」です。

http://marinegumi.exblog.jp/

 

Re: みじかばなし集

 投稿者:深田 亨  投稿日:2012年 5月 8日(火)00時23分27秒
返信・引用
  > No.3653[元記事へ]

パイロット版、楽しそうですね。
私もまぜて下さい。
10~20枚のあいだぐらいなら書けそうです。
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 7日(月)23時04分42秒
返信・引用 編集済
  > No.3656[元記事へ]

 先生
 ご講評ありがとうございました!
 ご指摘吟味し精進したいと思います。

>電子頭脳の性能は博士が一番知っているはず
 というのはまことにその通りで、厳密なことをいえば成立しないお話ですね。

 ただ、元ネタの「助かった三人」も、面積体積のある人間を、「重心」という一点で代用することで成立する話なんです。だから厳密にはありえず、ひとつの「お約束」としてそれを認めることで、空理空論を楽しむ話です。
 というわけでそこは「お約束」としてスルーして欲しいなー、というのが、書き手の勝手な願望ということになります(汗)。

 要するに、博士は、方向といえば西や東と思い込んでおり、「前(方)」や「後(方)」が方向とは思ってなかったというオチなんです。(読者的には「前」も「後」も方向やったんやー、という、語の範囲の変化によるセンスオブワンダーを狙っています)

 でもこれで完璧とは決して思ってなくて、「その意図を、作品は十全に表現し得ていない」(その意図は、これでは伝わらない)、というご指摘だと受け止めて(結局そこへ行き着いちゃうんですよね。書き手が言い訳しちゃいけません)、さらなる技倆の錬磨に邁進する所存であります。

 もちろん先生のおっしゃる展開はもちろんアリですね。そういう技術論はとても勉強になります。ただこの場合、「助かった三人」のパロディからは、離れちゃうんですよねー。

 ということでリクエストは、カウシルズ「雨に消えた初恋」。ヨロシクお願いしまーす!

 
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 5月 7日(月)22時05分8秒
返信・引用 編集済
  > No.3655[元記事へ]

ある日の「チャチャヤングショートショトートコーナー」


…自分で動くこともできないのか。やーい悔しかったら、前進してみせろ!』」
はい。
と言うのが大熊宏俊さんの「方向の終着点」と言う作品でした。
おしいですねー
相当考えたんですけどね。
B中と言うのはちょっときついんじゃないかなーなんてね。
語り口もよくて、「南極では全ての方向が北」だという意外性も効いていてなかなか読ませます。
でも、音声認識で動くのであれば博士はなぜ「真北に向かって進め!」としか命令しなかったのかがおかしいと思うんですね。
自分の発明した電子頭脳の性能は博士が一番知っているはずですから、他の命令の方法もあったんだろうと言う気がします。
実際に隊員が言った「やーい悔しかったら、前進してみせろ!」を聞きわけているわけですからね。
例えばですよ、僕だったら、最初は音声で「方角」を伝える事しか出来ない、そういう性能だったのだけれど、博士のしゃべっている言葉を聞いて、自己学習する電子頭脳だったと言うのはどうでしょう?
南極点に着いた頃には方角を指示するだけではなく、普通に喋って命令出来るまで成長していたとか。
そう言うところを直していただければ準Aぐらいは差し上げたいところですね。
はい、というわけで、今ご紹介したのは大熊宏俊さんの「方向の終着点」でした。
さてと、次のリクエスト曲は高石ともやの「北へ帰ろう」です。
え?
あー、その前にCMだそうです。

http://marinegumi.exblog.jp/

 

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 7日(月)00時04分18秒
返信・引用 編集済
       方向の終着点

 先年、惜しくもアムンゼン隊(そしてスコット隊)に、先を越されてしま
ったけれども(スコット隊は悲運であった。謹んで哀悼の意を表す)、われ
われM国の南極探検隊も、幾多の危険と苦難を乗り越え、ついに今日、南極
点に到達した。

 と、そこにはなんと、不時着したおぼしい飛行船が、半ば雪に埋もれてい
たのだ。

 生存者はいるのか?
 救助に向かったわれわれは、飛行船内に憔悴した老人を見つけた。
 隊員の一人が、その老人を記憶していた。

 老人は、発明家として世界にその名を知られ、少し前に新型飛行船を開発
しそのデモンストレーション飛行に出発したまま消息を絶った、米国のL博
士であった。
 必死の手当の甲斐あって、L博士は意識を回復した。
 そして、今や好奇心の塊となったわれわれに対して、以下のような驚嘆す
べき話を物語ったのであった。

     ※

 わしは、長年の発明家人生の集大成として、この飛行船アキレス号を完成
させたのです。
 これは内部に、わが畢生の大発明なんじゃが、音声認識と方位を連動させ
ることができる電子頭脳が埋め込んでありますのじゃ。

 それゆえ操縦者は、ただ操縦席に取り付けられた伝声管に向って「東へ」、
とか、「西へ」、とか、進行方向を音声で指示しさえすれば、それだけで飛
行船は、自動的に指示された方角へ、飛んで行きよるのですよ。
 つまりこいつは、子供でも操縦できる画期的な飛行船、というわけじゃの。

 わしはこれを、世界の飛行船会社に大々的に売り込んでやろうと考えてお
った。で、まずはデモンストレーションを兼ねて、世界一周してみせること
を思いついた。

 早速、わしはアキレス号に乗り込んだ。出発地点は、わが故郷ニューオリ
ンズのコンゴ広場じゃ。多くの市民が、ひとめアキレス号を見ようと集まっ
てくれておった。わしは熱狂する市民に手を振って応えると、伝声管に叫ん
だのじゃ。
「真南に向って進め!」、と。

 はたせるかな、アキレス号はズージャ流れるコンゴ広場の上空へ、ふわり
と浮かび上がった。
 集まった何台ものバンドワゴンが競い合って演奏する、賑やかなマーチに
送られて、アキレスは、一路南へと飛行を開始したのじゃ。

 丁度西経90度線に沿って南下するかたちで、アキレスは快調に飛び続け
た。
 メキシコ湾を一気に越え、ユカタン半島で再上陸するも、すぐにエルサル
バドルから太平洋へ。ガラパゴス諸島を眼下に望んでからあとは、海、海、
海――。海しかない。

 わしはもう、すっかり有頂天じゃった。
 電子頭脳に命令を伝えたあとは、実際のところ、なにもすることはない。
 海しか見えないから、外を眺めるのにも飽きてしまった。

 で、わしは寝転がって、こんなこともあるじゃろうと持ち込んであった
無線ラジオ雑誌〈モダンエレクトリックス〉のバックナンバーで、ガーン
ズバックの連載小説を読み耽ったりして時間潰ししておった。これがなか
なか面白いんじゃよ。貸してあげようか。

 ふと、窓の外をみれば、アキレスはすでに大海原を渡り切って、いまや南
極大陸の大雪原に、船影を落として悠々と巡航しておった。

 と、とつぜん、アキレスが停止したんじゃ。

 故障? とんでもない!
 実はこれ、あらかじめ予期しておったこと。アキレスは南極点上空に達し
たんじゃよ。
 さよう、この上空じゃの。

 アキレス号は、南極点に到達したので、停止したんじゃ。
 なんとなれば、わしは「真南に向って進め!」と指示しておったからです。

 話がよく分からんとおっしゃるか。
 じゃ聞くが、南極点より南に、南はありますかな?
 さよう、あるはずがなかろう。

 そこでわしは、改めて、当初からの予定通り、
「真北に向かって進め!」
 と指示しなおした。
 このまままっすぐに、今度は東経90度線に沿って北上するつもりでいた
のですじゃ。

 ところが――
 アキレス号は、なぜか動き出さん。
 わしは再び、伝声管に向って声を張り上げた。
「真北に向かえ!」

 けれどもやはり、飛行船は出発せん。
 故障か?
 と思って、点検したが、どこにも異常は見つからない。
「おかしいな」
 わしは首をひねった。
 そして、なーんだ、と笑い出してしまったんじゃ。

 どういうことかって?

 考えてもみなされ、南極点に、南はなかったわけじゃろう?
 北はあるじゃないですか、って?
 そのとおり。では、西や東はあるかね?
 うむ。どうやら理解してきたようじゃな。

 そう、たしかに南極点には北はある。ではどっちの方角が北なのか?
 実は南極点から見れば、どっちの方向も、「北」なんじゃよ。
 なんと驚いたことに、南極点とは、南がないばかりか、東や西もない。北
という方向のみが存在する地点だったんじゃ。

 この事実に気づいて、わしは思わず笑い出してしまったわけじゃが、次の
瞬間、頭を抱えてしもうた。

 そりゃそうじゃろう?
 あの太陽をご覧なさい。
(と、L博士は、地平線すれすれのところにある真夏の真昼の太陽を指さ
した)
 あのお日様は、南極点では、北から出て、北に沈むんじゃ。なぜならここ
では、全方向が北、なんじゃから。

 整理しよう。南極点には南はなく、東も西もなく、あるのは北という方角
だけである。ところがその北は、360度すべての方角を指しており、いわ
ば無数にあり、結局はないに等しい。
 つまり南極点には方向が存在しない。「方向の終着点」だったというわけ
じゃ。

 ところが、アキレス号は方向を指示することで駆動する、最新式の音声認
識自動操縦型の飛行船である。
 たしかに最新式は最新式なんじゃが、その最新式が災いして、方向の存在
しないここでは、それがただの金属のかたまりになってしまうんじゃ。

 結局アキレスは、南極点という、方向の終着点に閉じ込められ、脱出する
あたわざることを証明されてしまった、というわけなんじゃよ。

     ※

「そして」
 と、L博士は締めくくった。
「とりあえず推進燃料がもったいないから不時着したはいいが、寒地用装備
を用意してなかったので、酷寒の外には出られず、そのうちに食料も尽き、
にっちもさっちも行かなくなって、もはやこれまでかと観念していたところ、
あなた方探検隊に救出されたという次第です」

 隊員たちは、その何とも意表を突かれる地球の神秘に、しばらくは声もな
かった。

 そのとき、急にテントの外が騒がしくなった。
「博士!」
 外で観測していた隊員が駆け込んできた。
「博士、アキレス号が動き出しました!」
 全員がテントを飛び出した。

 見よ! 今や単なる金属のかたまりでしかないと、証明されたはずの最新
式音声認識自動操縦型飛行船アキレス号が、紺碧の上空に浮かんで遊弋して
いるではないか。
 ほどなくアキレス号は着陸し、〈モダンエレクトリックス〉誌のバックナ
ンバーを運び出してくることを命じられていた隊員が、操縦室からフラフラ
しながら出てきた。

 全員が口々に同じ質問を浴びせかける。如何にして飛行船を動かし得たの
かと。

「いや、自分でも信じられません。私はただ操縦席に座って、散らばった雑
誌を集めながら、こう呟いたんです。
『オイコラ、お前は図体ばかりデカイくせに、自分で動くこともできないの
か。やーい悔しかったら、前進してみせろ!』」


●本篇はB中だったと思います。元原稿にはメモしてあったはずですが、現存する草稿は、高校のSFサークル誌に載せるため清書しなおしたもので、評価を書き写してない。この辺が間抜けなんですなあ。お読みになって分かるかどうか、本篇は石原藤夫さんの「助かった三人」を自分なりに再現したつもり。「助かった一人」ですが(笑)
なお、アムンゼンの南極点到達は1911年12月(スコット隊は翌年1月)。「ラルフ124C41+」の連載は1911年4月から12回。だからこの話の設定時点は1912年暮れ。1910年代ならニューオリンズは既にジャズの街と認識されていたでしょう。当然この辺は、今回お遊びで付加した部分です。
 
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 5月 6日(日)13時42分18秒
返信・引用
  > No.3653[元記事へ]

「戦争とは知らなかった子供たち」
これはいいですねー
タイトルで、オチから結末まで想像できてしまうにかかわらず、いい作品でした。

パイロット版かー
楽しみですね。
楽しみにもかかわらず、少々気が重いのはなぜでしょうか?
ブログに慣れてしまって、活字になってしまうともう修正が出来ないというのがその原因かもしれませんね。

http://marinegumi.exblog.jp/

 

Re: みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 6日(日)12時31分38秒
返信・引用 編集済
  > No.3652[元記事へ]

海野さん

> 「チャチャヤングショートショート」締め切りの目安などあれば教えて下さいな。
 来年が出版デビュー50年目ですから、来年の「囲む会」に持ち寄るということにしましょうか。

 <追記>それまでにパイロット版を出してもいいかなという気になってきました。パイロット版なら作家が偏っても問題ないでしょう? 私と海野さんと雫石さん。できれば深田さんにogawaさんも。これで数十ページの冊子はできますね。

 <さらに追記>深田亨さんの怪談!→FukadaMagazine



     戦争とは知らなかった子供たち

 ぼくらの町に、巨大なゲームセンターができた。
 広いスペースに、百台ものゲーム機械が並んでいる。
 規模だけではなく、遊べるゲームもすごい。
 戦闘ゲームなのだが、機械の前にすわり、フェイスバイザーをすっぽり
被ってしまうと、本当に戦場にいるようなリアリティなのだ。
 実際に着ぐるみ型の戦闘ロボットの中に入って操作している感じ。
 ゲームをスタートさせると、まず「司令官」による今回の作戦の説明が
ある。その指示を守りながら戦うというルールになっていて、これも臨場
感を高めてくれる。
 超リアリズムなので、被弾したらかなり衝撃がある。場合によれば、す
わっている椅子から弾き飛ばされてしまう。
 それがまた、ぼくのような戦闘マニアには楽しい。

 実際人気で、百台もあるのに、いつも満員だ。
 ぼくらのような子供だけでなく、オトナまで、朝から遊んでいる。
 オトナは働けよ!
 せっかく行っても、満員で待たなければならないときは、そんなセリフ
も吐きたくなる。

 作戦が成功したら、ジャラジャラと玉が出てくる。出玉はどれほど相手
にダメージを与えたかによる。当然、大勝利なら多い。
 出玉は、裏の交換所で金品と交換できる。交換率はパチンコなんかより
ずっとよい。噂によると、このゲームセンターは、第3セクターの経営ら
しい。だから資金が潤沢にあって、交換率もよいのだと、オトナたちが話
していた。
 それで、パチンコで遊んでいたオトナが、みんなこっちに移ってきた。
町のパチンコ店は、あらかた潰れてしまった。

     ※

 ところがこの頃、玉の出が悪くなった。戦ってもなかなか勝てないのだ。
 はっきりいって、敵が強くなってきていた。
 被弾で怪我をするようになってきた。
 ゲームで遊んで、怪我をするなんて!
 遊ぶ人が減ってきた。
 ぼくは待たないでゲームできるようになったので、ある意味嬉しかった
のだが、怪我をしたりするのは本末転倒だ。大体「司令官」たちの作戦が
まずいんだよ。あんな作戦で、勝てるはずがないっ!

 ある日、ゲームセンターに行くと、閉まっていて、入り口に張り紙が。
 みんな集まって、張り紙を見ながらわいわいがやがや言っている。
 ぼくも読んでみる。

  “この戦争は、わが国の無条件降伏により、終戦しました”

 空が暗く陰ったので、振り仰ぐと、毎日戦っていたのだから見間違える
はずがない、昨日まで戦っていた敵の部隊が、しずしずと降りてくるとこ
ろだった。
 
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 5月 6日(日)10時36分55秒
返信・引用
  戦争は知らない子供たち


「子供たち」はその惑星に降り立った。
迷彩色に塗られた宇宙船から地上に足を踏み出した彼らは完全装備だった。
普段は柔らかく、外部から衝撃を受けると一瞬に硬化して身を守る防御スーツに身を固めそれぞれ高性能火器を携えていた。

その集落に「子供たち」が近づくと原住民は原始的な武器を持って出迎えた。
「子供たち」はいつの間にか戦車や装甲車に取り巻かれ、上空には無数の航空機が見えた。

あたりは焼け野原だった。
大都市だったそこは完全にがれきの山と化し、生きて動くものはなかった。
空を満たしていた航空機もすべて落ち、今は黒煙に満たされていた。
「子供たち」の防御スーツには一筋の汚れもなく高性能火器がまだ少し暖かいだけだった。

「子供たち」はまだ戦争を知らなかった。
ただ一方的な虐殺と破壊しか。




思いつけば、書かずにいられない(笑)
連休中に何本か書けるかなと思っていたんですが、なんか、レコーダーのHDDの録画番組の整理にはまってしまって、庭の手入れもありで1本も書けませんでした。
「チャチャヤングショートショート」締め切りの目安などあれば教えて下さいな。

http://marinegumi.exblog.jp/

 

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 5日(土)18時18分11秒
返信・引用 編集済
  > No.3650[元記事へ]

 段野さん
 や、ブリーゼで待っていて下さったのですか? すみません。愚図愚図していたらブリーゼに寄る時間がなくなってしまったのでした。しかしそれにしても、私がブリーゼに行くであろう時間を、どのように推理されたのでしょうか? 深田さんに大宴会集合時間を聞き、それから逆算して推定した、とか(^^; ともあれ、ご迷惑をおかけしました。

>お会いしてお渡ししたいものがあったのですが
 さて何でしょうか(笑)よろしかったら郵送していただけますか(郵送可能なものならば)。
 いずれにせよ何か知りたいので、まずはメール頂けたらと思います。住所は「北西航路」の巻末住所録で変わっていませんが(但し4号までの住所。5号以降のは違います)、必要ならメールでお知らせいたします。よろしくお願いします。

 追記。文字化けのエントリーは消去しておきますね。



●チャチャヤン日記によれば、1971年2月13日(土)脱稿、18日(木)投函。25日(木)の放送でB中をいただいたようです。これが実のところ初投稿。2月15日に滑り止めの私学入試日、3月17日に公立高校入試日だというこの時期に!! 私の人生はこれで変わってしまったように思われます(>おい)(^^;


     戦争を知らない子供たち

 私たちは幸か不幸か、と申しますのは、幸いにして記録に残っている最
後の「戦争」よりのちは、一万年以上もの間、平和が続きましたもので、
その結果、不幸にして私たちは、「戦争」とは何であるのかを、完全に忘
却してしまっていたのでした。

 ただ古代博物館には、古代文明の遺物である紙製の「書物」というもの
が何冊か保存されておりまして、そのうちの一冊の「辞書」という冊子に、

 《戦争:国家が他国に対し、自己の権益を守ったり、自己の目的を達す
   るために□□を行使する闘争状態。国際法上は、宣戦布告により発生
   し、当事国間に戦時国際法が適用される》

 と記されているのが、□□の部分が痛みが激しくて判読できないのです
が、それが「戦争」に関する唯一の手がかりでありました。

 わが惑星の一つ外側を公転している惑星MRSに、どこからやって来た
のかも定かではない宇宙種族が、いつのまにか植民地をつくって住みつい
ているのに気づいたのは、つい最近でした。

 それまで何万年もの間、この太陽系に於いては、知的種族はわが惑星に
しか存在せず、どこか他の宙域から、別の知的種族がやってくるなんて、
まず思いつきもできなかったのです。

 ですから、とつぜん相手が無理難題をふっかけてきて、それで初めて相
手の存在に気づいたという体たらくで、私たちの指導者たちは、なにしろ
それまでそのような経験が皆無だったものですから、いったいどのように
対処してよいものやら、全く途方に暮れてしまい、いたずらに会議を開い
ては、ただ互いに嘆き合うばかりで、何も決まりません。

 そんなとき、古い文献に詳しい或る指導者が、「あ、そういえば……」
と、くだんの「戦争」を思い出したのでありました。

 ワラをもすがる思いで、指導者たちは、この〈言葉〉に注目しました。
 かれらは、「戦争」という〈言葉〉に、何か不可思議な魔力が籠められ
ているに違いない。そう思い込んだのでした。
 先の古い文献に詳しい指導者も、「コトダマ」という、また別の〈言葉〉
を持ちだして、自説を補強しました。

 そんなわけで、かれら――私たちの指導者――は、私たちの星、地球の、
全通信手段にうったえて、「戦争」「宣戦布告」という〈言葉〉を、大量
かつ一気に、集中して、相手の星へと送り込んだのでした。

 惑星MRSの、テレビというテレビ、ラジオというラジオ、電話という
電話は、いっせいに「戦争」「宣戦布告」という〈言葉〉をがなりたて、
上空からは「戦争」と書かれた無数のビラが、際限もなく降り注いだはず
です。

 ところがです――
 意外にもと申しましょうか、当然ながらと申しましょうか、相手は、
「戦争」「宣戦布告」の意味を、よく理解しておりましたのですよ。

     ※

 そういう次第で、この地球には、いまは人間は一人もおりません。

 ただ、放射能に影響を受けない私たちロボットだけが、以前と変わらず、
人間に与えられた仕事を、忠実にこなしているばかりなのでございます。
 
 

管理人様へ

 投稿者:段野のり子  投稿日:2012年 5月 5日(土)14時38分8秒
返信・引用
  まただめなのかな。ご迷惑をかけております。実はサンケイブリーゼでお会いしてお渡ししたいものがあったのですが、状況が変わったとのこと、残念でした。  

管理人様へ

 投稿者:段野のり子  投稿日:2012年 5月 5日(土)14時29分42秒
返信・引用
  小松左京のチケット購入しました。(ブリーゼまで行って)実はその時にお渡ししたいものがあったのですがお会いできない状況が発生したとのこと。残念でした。  

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 5日(土)03時29分15秒
返信・引用 編集済
  ●本篇は原題「邪馬台国異説」。チャチャヤン日記によれば、1971年2月20日に書き上げています。豊田有恒さんの「倭王の末裔(第一部)」がSFM70年11月臨時増刊号なので、影響を受けて書こうとしたことが一目瞭然ですな。ただチャチャヤングに投稿したのかどうかは不明。一応書き上げはするのですが、郵送する段階で躊躇してしまうことが多かったようです。本篇も、ストーリーのゆくたては全く変更していません。ただ行程の記述を詳細にしたのと、邪馬台国の所在地に一捻り加えました。実は初稿は、本篇のなかで批判されている邪馬台国南海上説そのまんまだったのでした(汗)



     邪馬台国、宜候!

 邪馬台国の所在地については、従来より様々な説が、歴史学者のみならず、在
野の歴史家、郷土史家によって発表されてきた。
 それらを概観するに、邪馬台国は日本列島のいたるところに存在しうることに
なるのであるが、端説を除外すれば、概ね、邪馬台国大和説と邪馬台国北九州説
に収斂する。

 これら諸説において、必ず下敷きにされたのが、《魏志倭人伝》であったこと
は言うを俟たない。
 これは、正確には、『三国志』という中国の歴史書を構成する『魏書』の、
「東夷伝」のなかの一章である《倭人条》のことである。
 この『三国志』という史書は、『漢書』が前漢滅亡後一世紀近く経てから完成
されたのに対して、ほぼ魏が滅びた直後に完成されており、正確であるとされて
いる。

 とりわけ『魏書』は、まだ魏が盛んだった頃に生存していた魚豢(ぎょか
ん)という人が編纂した『魏略』(散逸して現存せず)を参考にしたので、非常
に信用のおけるものであった。

 倭人伝の記す邪馬台国への行程を簡単に記せば、以下のとおり。

    七千余里   渡海千余里     渡海千余里   渡海千余里
 帯方郡――→狗邪韓国――→対馬(海)国――→一支(大)国――→末盧国
東南五百里 東南五百里 東南百里  南、水行二十日 南、水行十日陸行一月
――→伊都国――→奴国――→不弥国―――→投馬国――――→邪馬臺(壱)国

 これを地図上に単純にプロットすれば、邪馬台国は九州島のはるか南海に没する。
 そこで、方向は正しいが、距離に誤りがあるとするのが、上記九州説。
                            南、水行二十日
 それとは逆に、距離は正しいが、方向に誤りがあるとして不弥国―――→投馬
南、水行十日陸行一月
国――――→邪馬台国を、東の誤りであるとして、近畿地方にその所在地を求め
たのが、大和説であった。

 しかしこれらの説はどれも、《魏志倭人伝》の記述を「訂正」して解釈するこ
とにおいては、相等しいものといえた。

 あるとき、一人の在野史家が、倭人伝の記述はこのまま正しく、邪馬台国は、
その頃九州島の南方に存在した大陸のことである、と主張したが、これは三世紀
当時の九州南方太平洋の地質学的事実と全く反しており、学説に根拠なしとして
相手にされなかった。

    ※

 時は過ぎ去り、いつしか22世紀になった。
 この頃、タイムマシンが発明された。
 まだ開発されて間がないので、航時距離は2000年以内という制約があったけれ
ども、タイムマシンは、謎や推測的学説が幅を利かせていた従来の歴史学に光明
を投げかけた。
 歴史学者は、直接、疑問の多い時代に出掛けてゆき、事実を持ち帰った。

 邪馬台国も例外ではありえなかった。
 22世紀になっても、邪馬台国を「直接的に明示」する遺物は発見されておら
ず、大和説が優勢ではあったが、いまだ「邪馬台国はここだ!」と指し示す実証
的な根拠は、示し得なかったのだ。

 多くの歴史学者が、それぞれ自らの信奉する学説に拠って、3世紀の九州、大
和、あるいは伊予、吉備、尾張三河、富士山麓その他の地へと跳んだ。
 しかし、大和にも、九州にも、またその他のどこにも、邪馬台国と特定しうる
明示的な証拠を見出すことはできなかったのである。付近の住民に聞いても、そ
んな国は知らないというのだ。

 これはどう考えても不思議な話だった。邪馬台国はどこにあるのか? 20世
紀のブームに勝るとも劣らない邪馬台国ブームが澎湃として巻き起こった。

 ある学者は考えた。
「邪馬台国は紀元238年以降、たびたび魏へ遣使し、その答礼を授けられてい
る。しかし魏使が邪馬台国を訪れた確実な記載があるのは、248年の臺與の要
請を受け、帯方郡から塞曹掾史張政が派遣されたのが唯一である。ならば、この
張政の使節団に潜り込めば、おのずと、そして確実に、邪馬台国に至れるのでは
ないか」と。

 かくして歴史学者は、248年の帯方郡へと跳時した。

     ※

 はたして郡では、塞曹掾史張政が、邪馬台国へ渡る使節団を組織している最中
であった。歴史学者はうまく使節団にもぐりこんだ。

 帯方郡(現・ソウル付近)を出発した一行は、海路、半島西南岸に沿って乍南
乍東、狗邪韓国(プサン付近)に着いた。そこで大型船に乗り替える。対馬、壱
岐を過ぎ、末盧国(松浦半島)に上陸。そこからは陸行で、伊都国(糸島)、奴
国(博多那賀川)、不弥国(宇美)へ至る。

 当時、大阪湾が上町台地の東にまで入りこんでいたのと同様、筑後川流域もま
だ沖積しておらず、筑後内海というべき水郷地帯であった。
 またその東北端の基山から大野城市を抜け、博多湾へと至る、丁度JR鹿児島
本線沿いが、狭い二日市水道を形成していた。郡使一行は、不弥国で再び船上と
なると、二日市水道を南へ向けて進路を定めた。

 ここにおいて、方向に誤りがあるとする大和説は瓦解した。

 一行は葦の生い茂る、浅い筑後内海の水郷地帯をつっきり、噴煙たなびく阿蘇
山を左手に見ながら九州島西岸を南下、水行二十日にして、投馬国(つまこく)
に到着した。そこは薩摩半島の南端であった。

     ※

 歴史学者は驚いた。倭人伝によれば、投馬国より邪馬台国までは、南へ水行十
日、陸行一月なのだ。
 薩摩半島の南は、太平洋である。そして太平洋しかない。

 かつて20世紀に、市民史家の中に、邪馬台国は九州南方海上にあった大陸で
あるとの奇説を弄した者がいたが、たかだか、20世紀からすれば1700年前
という、地質学的には瞬間といってもよい近過去に、そのような大陸が存在して
いた事実はなかった。

「では、我々は、ここから、おそらく大型船に乗り換えるのであろうが、どこへ
向って出発するのか?」

 歴史学者は呟いた。と、そのとき、背後から……

「いやまあ、船は船なんですけれどね」

 驚いて歴史学者は振り返った。
 背の高い、不思議な風体の男がニヤニヤ笑いながら、歴史学者を見ていた。

「あなたは?」

「私は、あなた方ご一行を、邪馬台国まで案内する役目を仰せつかった邪馬台国
の、投馬国駐在員です」
 男は自己紹介した。
「実は使節団の随行員の中に、22世紀からやって来た歴史学者がいらっしゃる
との情報を受けましたもので、いったいどんな方なのかな、と興味深々でお待ち
していました」

「ど、どうして私の正体を……」
 と言いかけて、歴史学者は気づく。
「私が22世紀から来た歴史学者って、それを知っているということは、では、
あなたもタイムトラベラー?」

「時間航行技術を開発したのは、何もあなた方22世紀人だけとは限らないので
はないですか」
 男は楽しそうに言う。
「今から一万年前に、我々ヤムー人も、時間航行法を開発していたとしたら?」

 今こそ、歴史学者は知るのであった。
 倭人伝の記述には、毫も誤りはなかった。たしかに、邪馬台国は九州の南方海
上に存在したのだ。ただしそれは、3世紀の太平洋上に、ではなかったのだ。

 いよいよ〈渡海〉の日が来た。歴史学者は、まるで子供が遠足に行くようにウ
キウキしながら、使節団とともに《船》に乗り込むのであった。……


 
 

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 4日(金)16時29分37秒
返信・引用 編集済
  ●本篇は高校時代の作品(チャチャヤンは既に終了)で、最近ネットで見つけた記事をくっつけてみました。 《宇宙の人間原理》の真実が明らかになります(笑)

      害獣

 三度目の〈ジャンプ〉のあと、スクリーンには目指す惑星が、真っ黒な
空間に、青白く浮かんでいた。
 いつもならこの瞬間、俺の心と体は、目前の惑星で待ち受けるミッショ
ンへの期待で、熱く高揚するのだが、今回はいささか事情が違った。

 だれだって、喩えそれが我々のような「人類」ではなくても、それなり
の知性を持った生物種を(いや知性があろうとなかろうと)、ジェノサイ
トしてこい、などという指令を受けたら、気が重くならないはずがない。
 いまの俺がそうだった。

 この惑星は、ラグ=13=7番星という名前で呼ばれている。ラグ星域(セ
クター)で13番目に踏査された恒星系の、外から7番目の惑星という意味だ。
 13番目というのは、かなり早い時期に踏査されたということだ。この惑
星の公転周期で、ほぼ一億公転周期以前である。

 植民適性Aの、我々種属には最もハビタブルな惑星の一つなのだが、一
億公転周期も前に踏査されているのに、植民がなされなかったのは、あま
りに辺境であることと、自生種属から知性種が生まれる可能性が認められ
たためでもある。

 ところが、諸般の事情で(というのは役人のいつもの逃げ口上だが)、
それ以降、当惑星の監視調査がなされてなかったのだ。これはわが連邦植
民省の大失態であった、というべきであろう。

 つい最近、偶々この恒星系の近傍、三光年の空域を通過した巡視船が、
この惑星の生態系が、著しくゆがめられていることを発見した。

 この一億公転期間に、途方もないことが起こっていたのだ。

 普通どんな惑星も、生態系というものがあって、自然と環境のバランス
が、それなりにとれている。ところが、ここ、ラグ=13=7番星では、そ
れがムチャクチャに狂ってしまっていた。

 生物の種類が極端に減少し、そのかわり、或る一つの種のみが異常繁殖
して、他種をどんどん絶滅させていたのだ。
 その或る種族というのが、「ヴァーブ」であった。
 この「ヴァーブ」を惑星から抹殺してしまうのが、今回の俺のミッショ
ンなのだ。

 生態系のバランスが崩れたら、どうなるかというと、これはもう、惑星
の慢性的な自殺にほかならない。
 実はこのような現象は、この銀河で例外的ながら前例があった。
 プローブによる調査の結果、やはり前例と同じ事態が発生したことが判
明した。

 いまから6500公転周期前に、この惑星に、小惑星にも等しい巨大隕
石が衝突し、我々が知性化を期待していた「人類」種属は、全滅してしま
ったらしい。そのためにできたニッチを埋めたのが、この「ヴァーブ」と
いう種属だったと思われる。

 ヴァーブは「人類」種属ではなかった。

 元来、「この宇宙」は、《宇宙の人間原理》によって、われわれ人類の
みが、知性を有しうる。
 事実、この銀河系に勃興した知的種属は、すべて「人類」だった。

 ところが、この惑星では、「小惑星の衝突」という突発的な「事故」で、
「人類」種属が絶滅してしまった。
 本来ならそういう惑星は、知性種のいないまま環境が維持されて、他星
の人類によって植民されるのを待つことになる。

 ラグ=13=7番星も、そうなるはずだった。ところが、植民省の失態で、
一億公転期間も、監視の目から外れてしまった。
 その結果、思わぬ他種から、異常な進化を遂げるとんでもない悪性種が
現れ、この惑星に覇を唱えてしまったというわけだ。
 いわば宇宙の「癌細胞」――それこそが「ヴァーブ」なのだった!

 そういうことを一生懸命考えることで、俺の体内は、ようやく、この生
物への嫌悪と憎悪で、はちきれんばかりになっていた。
 俺は気力を奮い立たせ、「よしっ!」と気合を入れると、船を大気圏に
突入させていった……

     ※

 防毒マスクを着けた人々が逃げ惑っていた。
 彼らの頭上――昼なお薄暗いスモッグの空を、巨大な黒い円盤が、緑色
の光線で人々を焼き焦がしながら、音もなくすべっていた。

     ※

 ――しんと静まり返った無人の路上。泥だらけに踏まれ、千切れた、新
聞の残骸。
 それには次のような記事が、なお、かすかに、読み取ることができた……

「地球の哺乳類は、小惑星の衝突で恐竜が絶滅するという好運に恵まれた。
そうでなければ、生き残るのは進化した恐竜のようなものになるはずだ。
それは、人類が決して遭遇したくない類の生命体だ」
 

Re: 風の翼大宴会

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 4日(金)12時33分6秒
返信・引用
  > No.3644[元記事へ]

 雫石さん

>できれば3本ぐらい
 オッケーです。海神シリーズは、何本かまとめて読むほうが、ムードが伝わってよいですよね。
 よろしくお願いします。

 あ、それから20枚を超える短篇も(というのは、ショートショートは一般的に20枚以内ということになっていますから)、まあ30枚程度までなら可としたいと思います。

 ところで、《チャチャ・ヤング=ショート・ショート》を眺めているんですが、この判型、少しだけ定形外ですね。測ってみると、横21.5センチ、縦15センチでした(一般的なA5サイズは14.8x21)。ちょっとだけ細長い。
 しかし、この判型を完全に踏襲すると、紙を切る工程が増えてしまいます。
 私の判断ですが、A5用紙で代用したい。あのハヤカワ文庫でさえ、文庫を名乗って許されているのだから、いいんじゃないでしょうか。どうでしょうか(^^;
 

Re: 風の翼大宴会

 投稿者:雫石鉄也  投稿日:2012年 5月 4日(金)06時49分52秒
返信・引用
  > No.3643[元記事へ]

「チャチャヤング・ショートショート・マガジン」
海神シリーズのどれか1本、できれば3本ぐらい投稿しようとおもうのですが、いいですか?

http://blog.goo.ne.jp/totuzen703

 

風の翼大宴会

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 3日(木)23時00分17秒
返信・引用 編集済
  > No.3642[元記事へ]

 海野さん

 不具合ご報告、ありがとうございます。
 海野さんに倣って、BOOKからVOOKへ飛躍を図ったのですが、なかなかうまく行きませんね。
 実際、「とべ、クマゴロー!」のページも、インターネットエクスプローラ7.0とグーグルクロームでは、見え方が微妙に違います。中村融さんのブログスキャナー・ダークリーなど、わがPCでグーグルクロームで見ると、カタカナの「ト」が、縦棒が消えて「ヽ」にしか見えません。
 まさに山田正紀的懐疑が実現していて、けっきょく、テキスト文書(=BOOK)が無難なのかなあ、と考えてしまいますね。

 さて今日は〈風の翼〉黄金週間吉例大宴会でした。大宴会とは言い条、集合したのは、中相作(宇井亜綺夫)、所与志夫(聖亜仁伊)と私の三人。
 この事態は事前にほぼ分かってましたので、遠隔地(諏訪や相生)の方には、今回はお声をかけませんでした。せっかく交通費や宿泊費をかけて来ていただいても、この三人だけというのではちょっと申し訳ないと(汗)。「え?」と驚かれたかも知れませんが、そういう次第で、あしからずご了解をm(__)m

 追記。地下のお店に入ったので、ひょっとして遅刻して来られて、私のケータイに連絡された方がいたなら申し訳ありません。あとで気づいたのですが電波が不通になってました。

 しかしまあ、私個人的には、阪神大震災前は、この三人でつるむことが多かったので、昔を思い出して非常に楽しかったです。

 わずか三人ですが、<チャチャヤング・ショートショート・マガジン>の打ち合わせは進みます。
 今回、やはりMBSから出た2冊の冊子の形態は踏襲しよう、と言うことに決まりました。もし作品が完成していましたら、私宛送って下さいね。既にネット上にアップしている分でもオッケーです(というか過去作品でもオッケーなんですが)。

 追記。あ、そういえば、出発時点でグズグズしていて、到着がギリギリになり、小松左京の切符を買いにいけませんでした。仕方ない、ローソンで買いますか。
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 5月 3日(木)19時32分59秒
返信・引用
  > No.3641[元記事へ]

画像がなぜか見えないいんですけど。
おそらく下の文章をプリントスクリーンして加工した画像かな…
と思ったんですが、そうだ携帯で見られるかも。

見られました。

  そっちはこっち

  こっちはあっち


ですね。
あれ?もう一台のパソコンでも見られますね。
「展覧会の絵」はちゃんと見られるのになー

http://marinegumi.exblog.jp/

 

Re: みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 2日(水)10時47分44秒
返信・引用 編集済
  > No.3640[元記事へ]

●すみません。無限修整のループにハマり込んでました。これにて決定稿。もう触りません。



 スーパーのレジ袋を抱えた鏑木は、背中でドアを開け、真っ暗な店内に
半分体を入れた。
「うん?」
 レジ袋を置き、壁のスイッチを押す。
 店内に光が満ちた。

 誰もいない。

 いるはずがない。これから開店準備に入るのだ。
 店内はひっそりと、静まり返っている。
 でも……

 鏑木は、奇妙な違和感を覚えた。
 なんというのか、今まで馬鹿騒ぎしていたのが、彼が入って来たので、
急にいっせいに息をひそめたような……
 そんな不自然な何かを、ふと感じたのだ。

 たしかに、今まで大勢がいたような空気が、店内に残っていた。
 くんくんと鼻で嗅いでみる。

 ――昨日の酒の臭いが、まだ残ってるのかな?
 彼は換気扇を回した。

 カウンターの中に入る。
 見ると、カウンターの上に、メモが一枚。

  

 ――なんだよ。昨日の客の遊び書きか?

 しばらくにらんでいたが、ほっと息をつくと、くしゃくしゃに丸めて、
くずかごに投げこんだ。

 その瞬間、世界は確定した。……



 
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 5月 2日(水)00時28分32秒
返信・引用 編集済
  オチが付いているようないないような(笑)
ここは、びしっと決めておきますか?


ワンダー海神ランド


「マスター、さっきから何をきょろきょろしてるの?それからウサギがどうとか、おかしな独り言…」
カウンターには金髪の美女が座っていた。
「あ、いらっしゃいませ。いつの間にいらしたんですか?」
「よく言うわね。幻でも見てたの?ハイボールを頂戴」
彼女は出されたハイボールを一口飲むと目の前にグラス持って来てそれを眺めながら言う。
「キープしてあるボトルがなくなると店を閉めるって言ってらしたわね?幻を見るようになっちゃ、もうそろそろじゃない?」
女はくくくくと笑った。
「そうかもしれませんね、大人になったあなたが見えるんですからね。アリスさん」
カウンター席のずっと奥を鏑木は見た。
照明の陰になっている席にいるのは…
パイプをくゆらせる芋虫だった。
その向こうにはチェシャ猫や帽子屋が…
「こっちにもバーボンをお出し!」
そう言ったのはハートの女王だ。
鏑木はフォアローゼスのロックを作った。

カラーンとカウベルが鳴った。

鏑木は店に入って来ると、壁のスイッチを入れた。
真っ暗だった海神の店内は薄明るく照らされた。
更にいくつか照明のスイッチを入れるたびに明るくなって行く。
誰もいない。
昨日の酒の臭いが濃く残っているので、彼は換気扇を回した。
鏑木はきょろきょろとあたりを見渡した。
ふと何かの気配を感じたのだ。
「ウサギ?」
足元を見る。
いやいやと、彼は頭を振ってその思いを振り払う。
「あり得ない物を見るようになったら、即、店をたたまなくちゃな…」
鏑木はカウンターの中に入り、別のスイッチを入れる。
今夜も海神の看板に灯がともった。



[追記]
あ、そうか。
一晩寝て気が付きました。
雫石作品は「アーリータイムのロック」と言うのがミソですね。
それじゃーと言うわけで、「フォアローゼスのロック」を入れて編集しました。

僕のこれは、これから鏑木が見るかもしれない幻たちが開店前の海神にたむろしているんですね。
その中に鏑木自身の幻もいて、本物の鏑木が入ってくると同時に消えてしまう。
そんな感じです。

http://marinegumi.exblog.jp/

 

Re: みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 1日(火)22時24分8秒
返信・引用
  > No.3638[元記事へ]

 おお、雫石さんも、いらっしゃいませ(^^)

「ごちそうさん」
 ウサギは懐中時計を取り出した。
「わ、もうこんな時間!」
 あわてて飛び出していった。

 またカウベルが鳴った。
 だれも入ってこない。
 なんだ風か。と、見るとドアが少し開いている。
 とつぜん、
「バーボンをくれ。ロックで」
 鏑木はきょろきょろ見回したが、誰もいない。
「ここですよ」
 見ると、カウンターの、さっきウサギがすわっていたあたりの空間が、
ニヤニヤ笑いを泛べていた。
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:雫石鉄也  投稿日:2012年 5月 1日(火)21時55分36秒
返信・引用
  > No.3637[元記事へ]

それでは私も、ひとつ。
バー海神の出張サービスです。

そろそろ終わりにするか。
鏑木は、海神の店内をさっと掃除をする。
おもてのランタンの灯を消そう。
その時、カウベルが鳴った。
だれも入ってこない。
なんだ風か。と、見るとドアが少し開いている。
白いモノが店に入って来た。
ウサギ。ウサギ!
白いウサギが店に入って来た。
「バーボンをくれ。ロックで」
ウサギがいった。
鏑木はアーリータイムのロックを出した。
ウサギはひと息に飲んだ。
「ごちそうさん」
ウサギは出て行った。 

http://blog.goo.ne.jp/totuzen703

 

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 1日(火)15時58分26秒
返信・引用
  > No.3636[元記事へ]

 月でウサギが、ぴょーん、ぴょーんと高く跳ねて遊んでいる映像をテレビで見て、

「ああ、僕も月へ行きたいな!」

 ぴょんぴょん跳ねて悔しがるノミのノミ太であった。


 
 

Re: みじかばなし集

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 5月 1日(火)11時53分4秒
返信・引用
  それでは僕も

「ウサギ」


ウサギになった夢を見ていた。
それも月に住んでいるウサギだ。
ぴょーん、ぴょーんと軽くジャンプするだけで、低重力の月ではほんとに高く跳ねる事が出来る。
ぴょーん、ぴょーん。
高く跳ぶと遠くまで見渡せてとても気持ちがいい。

目が覚めるとベッドの上だ。
窓の外には青空と木々の緑が広がっている。
そうか、俺は地球に帰って来てたんだな。
起き上がろうとしたが起き上がれなかった。
そしていやな事を思い出していた。
ドアが開いて人が入って来る。
「さあ、今日からは地獄の日々が続くことになりますよー」
筋肉隆々のトレーナーだ。
「なんだって月面基地勤務の間に筋肉トレーニングをしなかったんですか?」
おれは筋肉の全く付いていない自分の腕を少し持ち上げた。
数秒しか耐えられなかった。



完成まで10分ぐらいかな

http://marinegumi.exblog.jp/

 

みじかばなし集

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 5月 1日(火)00時48分4秒
返信・引用 編集済
        ウサギ

 いい加減うんざりな、人間関係の糸のもつれまくった悪夢に、うなされ
て目覚めると、俺は、巣箱のなかでウサギになっていた。

「なぜだ~!?」

 あ、俺、ウサギだった!


●これは高井さんのショートショートに触発されて出来た作品。30秒で完成しました(^^ゞ
 

Re: ロックの自立

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 4月30日(月)21時13分22秒
返信・引用
   いま確認したら、「展覧会の絵」はLPそのままでした。
 なんとあやふやな記憶(ーー;

 せっかくなのでスキャンしました。帯(タスキ?)の画像は貴重かも。
 

Re: ロックの自立

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 4月30日(月)16時38分26秒
返信・引用
  > No.3632[元記事へ]

>一曲一曲選んで再生しなきゃいけませんね。
 これが流して聴くときのネックでしたが、フルアルバムが可能になったので、改善されました。

>それに玉石混交で、オリジナルかと思えば、素人の歌を聴かされたり。
 ガックリします(笑) ちゃんと表示してくれているのもありますが、ダマシに近いのもありますよね。限定公開にすればいいのにね。私はそうしています。
 

Re: ロックの自立

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 4月30日(月)13時37分17秒
返信・引用
  > No.3631[元記事へ]

あ、なるほど。
鳥が中心に来るように原画がトリミングされてるんですね。
はいはい。

電脳ライブラリーですね。
YouTubeではパソコンで音楽を再生するときは、一曲一曲選んで再生しなきゃいけませんね。
それに玉石混交で、オリジナルかと思えば、素人の歌を聴かされたり。
きちんと整理されたらいいんですけどね。
最近のテレビはネットも出来て、YouTubeなどは曲名や歌手名を入れておけば連続再生もしてくれます。

http://marinegumi.exblog.jp/

 

Re: ロックの自立

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 4月30日(月)13時06分52秒
返信・引用
  > No.3630[元記事へ]

 私の持っているLPジャケットは見開き型じゃなくポケット型ですが、この画像の右半分が表で、左半分が裏になっています。
 というか、これが原画じゃないですかね。
 そういえば、「展覧会の絵」も、LPジャケットとは違ってますよね。

 youtubeで一番気に入っているのは、クラウド化と言うのですか、ダウンロードして「所有」するんじゃないところなんです。
 頭の上あたりに電脳空間があって、欲しいものを欲しいときに、ひょいと手を伸ばして引っ張りだしてくる。利用し終わったら、勝手に電脳空間に帰っていく、というイメージです。

 なぜ個人個人が別途所有保管しなければならないのか。一か所にオリジナルがあって、個々、必要なときに引っ張りだしてきて利用すれば、無駄な容量食わないじゃん、と思いますね。
 最近はさらに嵩じまして、書物(文字データ)も、電脳図書館に古今東西のすべてのデータが揃っていて、読者はそれをひょいと取り出して、読み終わったらもとに戻す(途中ならどこまで読んだかの履歴は残っていて、次はそこから頁が開く)というのを想像します。

 いま、地方都市には都市ごとにちっちゃな市立図書館があります。うちなんか車で10分以内にそういう市立図書館が三館あります。で、おんなじような品揃えをしていて(同じようにSFや専門書籍は入ってこない)、無駄だなあ、と思っちゃいますね。三館統合すればもっと品揃えが広がるのに。電脳図書館はその究極型ですね。

 だいたい日本列島に、本って、どのくらいの重量で存在しているんでしょうね。いますべての物理的本が消滅したら、日本列島、数センチくらい浮上するんでは?(ないない)(^^;
 

Re: ロックの自立

 投稿者:海野久実  投稿日:2012年 4月30日(月)12時14分5秒
返信・引用
  > No.3629[元記事へ]

え?このアルバム持っていないぞ。
と思ったらファーストアルバムですよね。持っていました。
どうも、ジャケットの絵は羽ばたく鳥のイメージが強くて、左側に顔がデザインされていたのかと、ちょっと意外でした。
しかしYouTubeで全編聞けるんですね。
すごい時代になったもんです。
若いころ、好きだったけれどアルバムを買うほどでもなかったミュージシャン達の曲をYouTubeで落として、アイポッドで聞いていますよ。

http://marinegumi.exblog.jp/

 

ロックの自立

 投稿者:管理人  投稿日:2012年 4月30日(月)00時01分58秒
返信・引用 編集済
   ウィキペディアによれば、
>ロック(英: rock)は、アメリカで1950年代に黒人音楽と白人音楽の融合により生まれたポピュラー音楽のジャンルである。

 とありますが、(音楽のルーツ的にはそうかも知れませんが)もっと表層的には、ジャズでは白人は黒人にかなわないので、ロックがうまれたような。対抗的という意味では、ウィキペディアにも、

>そもそもロックはその勃興において、既存のジャズやクラシックに対する若者に訴求しやすい新たな対抗音楽文化として生誕しているという側面もある

 とあります。
 実際、最近のロックミュージシャンは知りませんが、少なくとも初期の、50年代から70年代までのロックは、(ジャズミュージシャンといえば黒人がイメージされるのと同じ意味で)ミュージシャンはほとんど白人ですよね。

 ところが、70年代に入ると、ロックシーンは、ニューロック、プログレッシブロック、ハードロック、すべてブリティッシュロックが卓越します。当時の私の感じでも(というか70年代のロックキッズはみんなそうだったと思います)、アメリカンロックはしょぼい、というイメージでした(唯一ブラスロックはアメリカオンリーでしたが、結局BSTもシカゴも、ジャズ系に戻って行きました。要するにジャズの鬼子だった。チェイスなんて、バディリッチ(は白人ですが)のリードトランペッター)。

 つまりビルヘイリー以下のアメリカンロック(ンロール)は、アメリカ白人の(黒人への無意識的な)対抗意識のみで成立している、音楽的には浅薄なものだった。それがイギリスに渡って(対抗文化的な意味合いは切断され)音楽的に成熟し(ブルースからクラシックへ)、ようやく音楽実力的に、ほんとうの対抗音楽(対黒人ではなく対ジャズ)となり得た。だから初期アメリカンロックに、黒人は皆無(例外はジェファーソンと組んだパパジョンクリーチくらいでは。でもジェファーソンはジェファーソンでも70年型にバージョンアップしたジェファーソンです)。これはイメージですが、ブリティッシュ・ロックがアメリカを薫陶して以降は、黒人もロックをやり始めたという構図は考えられないでしょうか(でも黒人ロックミュージシャンて、私はとんと思い浮かびません。むしろフュージョンやヒップホップですよね)
サンフランシスコはちょっと違うのかも。サンタナもいましたし。でもいずれにせよ70年代です。

 やっぱりアメリカンロックって、カントリーウェスタンの尻尾が切れないんですよね(C&Wのルーツというか田舎系であるブルーグラスは大好きですが)。

 以上は証明以前の思考メモ。

 ELP初期アルバムがフルアルバムで出揃ってますね(^^)。


 

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